第18話 混乱の教会
父は侍女であるエマが直接実行した者として処刑する事と決め、ヴァネッサは屋敷の離れで幽閉する事に決まった。
すでにエマは牢へ連行されていった。そして、ヴァネッサが今まで屋敷で母と私に対してしていた事が明るみになり、領地に帰還次第、使用人も一掃する事になる。
ヴァネッサの父親であるミュートリー伯爵はその手引きを手伝った事もあり罪人として処分したいところではあったが、娘のヴァネッサが幽閉処分で決まっているため大きな罰を与える事ができなかった。
よって、領地に戻っての3ヶ月の謹慎処分で留まる事になる。そして社交界追放も言い渡され実質上の流刑のようなものとなった。
残念ながらヴァネッサの証言だけではメザリントの罪を立証する事はできず、また毒を手配した者も見つかる事はなかった。
レインフォード辺境伯爵の妻であるクレアに使用されたアマリリスの花の毒は原産地がメザリント様の実家である北の辺境ヴァズレー伯爵の持つ領地であることから関連が疑われたがそれだけだ。
自身に辿り着かないことを確信していたメザリントは今ものうのうと側妃と言う立場で過ごしている。ミュートリー伯爵の失敗もすでに大してメザリントに影響しないのだ。
西方のほとんどが中立の立場へと変わった。だが今まで第二王子派であった彼らは中立と言いながらも未だ第二王子派と変わらない動きをしている。
そういった者達がいれば中立派を第二王子派に引きずるのに好都合でもあるからだ。
そして、リーフィアたちは色々と騒ぎのあった王都を離れ、領地へと戻る日がやってきた。見送りに来てくれているのはエドワード王子殿下だ。
その傍には今までいなかった側近の姿がある。彼はルイス・ガードナー。マークス王国騎士団長の息子で、アルバート王子殿下の側近候補だった子供だ。
エドワード王子殿下が臣下としての道を歩む事が決まり、いずれは共に将来の国王へ仕える者として同年代であるエドワードの側近として就けられた。
お互い切磋琢磨して競い合えという事だろう。初めて出会う彼と挨拶を交わす。
赤い髪がルイスの気の強さを表しているようだ。緑の瞳であることから彼は風の属性魔法を使えるようになるだろう。騎士として非常に有利な属性だ。
ちなみにクラウス様は秘密裏に行っている毒殺事件の調査で忙しくここには来られない。
「では、フィア。帰りは気をつけて。」
「はい。エドもお元気で。ルイス様、エドの事よろしくお願いしますね。」
「あぁ。任せとけ。」
ニッと笑うルイスはまるでガキ大将のようだ。幼いながらもリーダー的な資質を大いに感じる雰囲気を纏っている。
彼らに見送られながら、レインフォード領への道を馬車で向かった。馬車の中は行きと違って快適だった。
何が快適だったかと言うと、ヴァネッサが居ないからだ。彼女は別の馬車で罪人として連行される。
表立ってはそのような扱いになっていないが、いずれは知れる事になるだろう。
だが、母が居ない分寂しくもある。母はすでに棺へと納められ、帰ったら葬儀を領内で執り行う。
ミリーナ姉様とエルン兄様はしばらく落ち込んでいたが、領地に近づくにつれ少しずつ笑顔を見せるようになってきた。以前よりも家族の絆が深まった気がする。
領地に入り、屋敷へと戻ってきた。本邸にいた使用人の殆どと別荘に居た使用人の殆どが入れ替わる事になる。
私の信頼する執事のアーネスト、その妻で侍女長のエリーは本邸に戻された。ガド師匠は今も別荘で庭師をしている。
私の庭もあるのでちょくちょくお世話に行く事になるのであまり生活に変化はない。
そして、私にいじられ続けたマーサは相変わらずだが、私の世話を若干でも行っていたため処分を免れた。その時の歓喜の表情は忘れない。今までで一番輝いていた。
警護の者達も一新するべく募集をかけてブレインフォード商会の警護が何人か屋敷に勤める事になったがこれは当然ともいえる結果だ。
ブレインフォード商会の者は読み書き計算は当然できるようになっているし、剣は冒険者も兼ねていたので当然使える上に、ある程度の礼儀も身についている。
おまけに魔法の扱いも爵位の低い貴族並に扱えるのだから雇わないわけが無い。
その事情を知った父がブレインフォード商会の持つ護衛力に呆れ、同時に領主主導の事業としておいて良かったと安堵したなんて事もあった。
後で父からちょっぴりお叱りを受けたのは秘密だ。
そんなこんなでレインフォード辺境伯爵家は新しい日常へと帰っていったのだ。
――――…
教会それは悩める子羊を導く場所。そして秘密を守る場所だ。その秘密が破られたならもはや教会に信はない。
信者、それは信じる者。信を失えばそこを用いる事はない。
王都での社交シーズンが終わり貴族はそれぞれの領地へと帰っていく。
貴族が帰ると共に噂は広がっていく。教会の中に秘密を守らず利用するものがいる。
教会では懺悔と称し秘密を打ち明け心を戒めから開放する手助けをしている。
だが、もしその懺悔の内容を知られるような事があったならどうなるだろうか。
そしてそれがどこに広がり誰に知られているのか分からない。何を信じればいいのか、どこまで知られているのか。
不安と不信は広がり次第に誇張され拡散する。教会は信用できない。
それはすぐに民も知る事になる。
――――…
領地に帰った私は久々の教会を訪れていた。
ニコラウス様の個室へいつものように入るとにこやかな笑顔を湛えたニコラウス様が待ち構えていた。
「色々と言いたい事はあるが、まずは婚約おめでとうと言うべきかな。」
「ありがとうございます?」
色々って何の事かな?あぁ、そう言えば教会のお偉いさんの孫が問題を起こした事を報告しないといけないよね。
「全く。これだからそなたからは目が離せないというのだ。」
「えっと、私ですか?」
「他にこれほど問題を起こす者など居ないであろう。」
「ひどいです。ニコラウスお兄様、私は問題なんて起こしておりませんわ。」
頬を膨らませて不服だとアピールする。
「大問題を起こしたではないか。今、教会は混乱の最中にある。それも上層部の孫とそなたの件だ。」
「あれは彼女が言い出したことです。私はきちんと注意して差し上げましたよ?」
「だが、煽ったのはそなたであろう?」
「そもそもの問題はその上層部のお方でしょう。秘密を漏らしたのだから。」
「色々と呼びつけられて面倒を被ったのだ。そなたに文句の一つだって言いたくもなる。」
やれやれと大げさに溜息をつくニコラウス様。絶対面白がっているよこの人。
「ですが、そのお陰で教会の膿が出せる事に繋がるのです。好都合では?」
「ふっ、確かにそうだ。だが問題は他にもある。」
「寄付の件ですね?」
「そうだ。寄付が減る事でくる皺寄せは孤児院にもいくだろう。」
「それは困りますね。本来削るべきは別の所でしょうに。」
「そういった事も纏めて片付けてしまいたいところだ。」
「孤児院の運営はほぼ寄付で成り立っているのでしたよね?」
「そうだが、それがどうしたのか?」
少し考えてからニコラウス様にある提案をする。それは面白そうだと許可を貰った。
何をするかと言うと、お金が無いなら作ればいい。
孤児院の子供達で寄付を募る商売を始めるという新しい試みを始めることになる。
名付けて孤児院運営資金を稼ごう作戦だ。
炊き出しで出す料理を町の出店で販売するというもの。ついでに聖水や護符なども同時に販売することで相乗効果が出ることを期待している。
また、売り上げはすべて孤児院の運営に使われる事を分かりやすくアピールし、その売り上げや用途を明確に表示する事で信用を得ようというものだ。
今まで寄付の内容が一体どういったものに使われているのかが全く不明瞭であった分、分かりやすい孤児院の出店はすぐにリーベルの町に受け入れられる事になる。
そして、その試みは瞬く間に各地の孤児院で広まり、孤児院独自の運営資金を持つ事に成功するのだった。
孤児院の運営はクリアになり、不正一つ出来ないように取り締まる事になる。
抜き打ちの監査を入れたりすることで正しい運営をアピールするためだ。
だが、運営を公にする事で困った事になる者達も居る。
上層の一部の者たちは不正に搾取していた孤児院の資金が当てに出来なくなり、それを元に戻そうと動き出した。
――――…
教会のトップに立つメディウス・クライブは久々に開かれた会議で孤児院の新しい試みを耳にした。金の髪と黄色の瞳。
彼は教会の人間の中で最も強い光属性の魔力を持つ。クライブ家は常に教皇を選出してきた所謂教会のエリートだ。
だが長年その席を独占し続けてきたからこそ彼らは教会という狭い世界しか知らない。それ故に世間からは離れており常識もずれがある。
それを教会の上層部に占領する一部の者たちは利用する。
そう、会議に出席しているものは誰しもが善人と言うわけではない。正しい行いも捻じ曲げて伝われば間違った行いになる。
教会の最高権力者であるメディウスは教皇として教会の未来のために与えられた情報のみで判断を下す事になる。
リーベルの町にある教会はとある知らせを受けて大忙しだ。
どうやら教会のトップである教皇様が今日訪れるという知らせが昨日届いたのだ。もはや準備どころの騒ぎではないが出来る限り精一杯の準備を大慌てで行っている状態だ。
どうやらご子息も一緒に来訪されるとあってこの日リーフィアはそのご子息のお相手をするようにニコラウス様より承ったばかりだ。
だからといってリーフィアが何かを準備するかと言うと特別する事はない。事前情報が全く無いので精々お茶の用意をしておく程度の事しか出来ないからだ。
教皇様のお相手はニコラウス様が勤めるらしい。
なにやら苦々しいお顔で仰っていたので何か思うところがあるのだろう。
そんな事を考えていたらコツンと小突かれた。
そなたがやらかした事だぞ。まったく。という副音声が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいに違いない。
教皇様ご一行はその日の昼前に訪れた。教皇様とニコラウス様が挨拶を交わす。
その隣に教皇様の服の裾を掴んだ男の子が居た。教皇様と同じ金色を纏う彼はどうやら人見知りらしい。
とりあえず大人の事は大人に任せて子供同士で無難に挨拶を交わしておくことにする。
「はじめまして、リーフィア・レインフォードと申します。どうぞお見知りおきくださいませ。」
貴族の子女らしく挨拶をする。教皇のご子息は同年代だとは聞いていたが、挨拶をしただけでビクリとして縮こまってしまった。
どこまでお坊ちゃまなんですかと叫びたくなったが、少ししておずおずと挨拶を返してきた。
「ジョシュア・クライブです。はじめまして。」
それぞれの挨拶が終わりソファーに席を勧める。ここからは大人の話し合いだ。
少し離れた場所でジョシュア様とお茶でもしておこうかなと思ったが、聞こえてきた会話に思わずフリーズしてしまった。
「ニコラウス様はなにやら孤児院を使って商売を始めたらしいですな。」
「えぇ、孤児院の運営資金を集める上で非常に助かっています。」
「だが、孤児院で行っている炊き出しは恵まれない子羊たちへ無償で行っているもの。それにお金を取って儲けようなど愚かな行為は止めて頂きたいものですな。」
「儲けようなどとは考えておりませんよ。それに、市井の皆様が孤児院の助けになればとご好意で寄付して下さっている大切なお金です。それを愚かと言い切るのはいかがなものでしょう。」
「な、寄付だと?だが、リーベルの町は儲けているにも関わらず炊き出しの回数も他の町と比べて少ないのだ。弱きものを助ける協会の意思に反しておるではないか。」
「それは、一度町をご覧になればお分かりになるかと。確かにリーベルの町は他と比べて炊き出しの回数は少ないでしょう。ですが、それを必要とする者たちが少ないのはこの町の特色となっておりますから。」
「と、特色だと?どういう意味だ。」
「この町にはもう、スラムと呼べる場所はございません。いまやブレインフォードストリートと呼ばれるあの辺りは、活気溢れるリーベルの観光名所のひとつにも数えられるほどです。そして、その住人達は今、生き生きと生活をし、町に貢献しています。生活に困っている者が一人も居ないなどとは言うつもりはありませんが、居たとしても非常に少ない。それは炊き出しを行っている我々が一番理解しているところです。」
まだ何か言いたげな教皇様だったが、この話はここまでとニコラウス様がすっぱり別の方向へ話を持っていったため不満げではあったが何とかなりそうだ。
だが、孤児院運営資金を集めるための活動が随分と違った捉え方をされていたようだ。
きっと悪意のある言い回しをした者がいるに違いない。
しかし、それを鵜呑みにするのが教皇様というのはいただけないなと思いつつも、大人の話が飛び交うこの部屋でジョシュア様をおもてなしなんて出来そうにもなかった。
仕方がないので外を案内してくる事を教皇様とニコラウス様に許可を取って退出する。
「あの、どこへ行くのですか?」
不安げなジョシュア様を連れて外に出る。
「せっかくこの町に来られたのですから、楽しまないと損でしょう?」
ニッコリと笑って連れ出す。そう。教会の中を案内するなんて一言も言っていない。
外に出る許可を得たのだから活用しないとね。
教会の抜け道を通り、裏通りから町へと繰り出す。リーフィアはウィッグをポシェットから取り出し、髪色を変える。
金色の髪で緑の瞳。人目もあるし魔道具で変装するのは問題なのであらかじめ準備していたものだ。
「この先は私の事はリディとお呼びください。あと、ジョシュア様はジョーとでも呼びましょうか。」
「えっと?」
「お忍びですから偽名です。それから敬語も外してくださいね。ここから先、私はただのリディ。あなたはただのジョーですから。気楽に行きましょう。」
「う、うん。でも、いいのかな?」
「ちゃんと許可は取ったし。いいんじゃないかな?」
「………うん。」
不安げなジョシュア様の手を引いて町を抜ける私。もちろん目的はある。
このままいけば時期教皇はこのジョシュアだろう。
だが、今の教皇のように上層部の言葉を鵜呑みにするような人物に育って欲しくはない。外の世界を知り、自分自身の考えを持つことはきっと大切な事だ。
今回の事がそのきっかけになればいいと考えている。
リーベルの町を歩いて回る私とジョシュア。
初めて見る世界にジョシュアは目を輝かせている。きょろきょろと見回す様は完全におのぼりさんで、私が始めて両親と共にこの町を歩いた日のことを思い出す。
繋いだ手が離れないようにしっかりと誘導する。その足がふと、ある場所で止まった。
「いらっしゃい、坊ちゃん、譲ちゃんアプル飴は如何かな?一本銅貨5枚、美味しいよ。」
アプル飴とは、前世の世界で言うところのりんご飴だ。アプルはりんごほど大きくは無い。あえて言うなら姫りんご位の大きさだ。
味もりんごとは程遠い薄さ。しかし品種改良が進んでいないのでこれも仕方なくはある。食べるだけで精一杯なのだこの世界は。
しかし、飴が出てきたのはブレインフォードストリートで販売が開始したスライム糖のお陰。しかしスライム糖なんて名前じゃない。
普通に砂糖の一種として売っている。素材は分からないように工夫しているし味もかなり濃縮されているのですぐにスライムの核だと言い当てる事が出来るものは居ないだろう。
「2つ下さい。」
「はいよ、譲ちゃん。仲良く食いな。」
大銅貨1枚を渡して2本のアプル飴を貰う。1本をジョシュアに渡す。
「はい。ジョー食べたかったんでしょ?」
「うん。ありがとう。」
二人で食べながら歩く。食べ歩くという行為にジョシュアは目を剥いていたが、美味しそうな飴に耐えられなかったようだ。
思い切って齧り付く。ばりっと飴が割れて中のアプルが顔を出す。
「美味しい。」
「でしょ!甘味が食べられるようになったのもブレインフォードストリートのお陰だね。」
「あの、りー…リディ?」
「どうしたのジョー?」
なんだか言い出し辛い感じのジョシュアに首を傾げる。
「さっきの、お金…。」
「うん?お金がどうしたの?」
「今まで僕は何でも欲しいものは皆、言ったら持ってきてくれていたから。」
「うん?」
ぽつりぽつりと離すジョシュア。一体何が言いたいのだろうか。
「リディはどうしてお金を持っているの?」
「稼いだんだよ。」
「稼ぐ?」
「そう。働いて稼いだの。」
ぎょっとしたジョシュアに付いてくるように言う。そしていつもの様にあるお店の前に来て声をかけた。
「ジェミニー師匠、こんにちは!」
「おや、その声はリディかい?」
薬屋の奥から老婆が出てくる。その視線がジョシュアを捉えた。
「その子は?」
「ジョーっていうの。今日はジョーと一緒にお手伝いして良いですか?」
「そうだね。その子にできるのかい?」
「やだなぁ、師匠。初めからできる子なんて居ないでしょう?」
「そりゃそうだ。いいだろう。責任もってお前が面倒見るんだよ。」
ジェミニーさんは笑いながら許可してくれた。相変わらず良い人だ。
「はい!じゃ、ジョー行くよ。」
「あ、はい!リディ。」
調合室へと入り手を清める。そしてポーション作りの手伝いを始める。
ポーションの作り方は比較的簡単だ。材料となる薬草を綺麗に水洗いし、さっと湯にくぐらせる。それをざっくり刻んで乾燥させる。
水分が蒸発したら香りが出るまで熱を加える。それが出来たら一旦覚まして揉み解し、お湯を注ぐ、出来た液を濾してビンに詰めるだけの簡単なもの。
言ってみればお茶の作り方に似たようなものだ。そもそもポーションというのはゲームで言うように使えば傷がすぐに治るほどの効果はない。
傷が治るのを促進する程度の効果しかない。ぶつけても消毒液代わりになるだけだしガラスが割れて危険なので推奨しない。
ジョーと共に作業を進める。初めてにしてはナイフ使いがうまいジョーに驚きつつもせっせと作業をする。
ポーションは全部で50本だ。使った薬草は100株。つまり薬草2株で1本のポーションが出来る計算だ。
取り出せるポーションの量はだいたい200ミルくらい。大体湯飲み1杯分くらいだ。
ちなみに1ミルは1ミリリットルのこと。1リットルは1リルのこと。
このポーションは販売価格が1本で大銅貨1枚もするから驚きだ。
薬草は10株で銅貨1枚程度。わずか200ミリリットルのお茶のようなものに1,000円出すのだからどこの高級茶だよと言いたくもなる。効果も微妙。
だが、教会に行って軽度の怪我を治すのに必要な寄付金が大銀貨1枚で100,000円からということも考えればポーションで我慢しておこうと言う気持ちも分からないでもない。
作業を終えた私達をジェミニーさんが呼び止める。そして手渡しで渡された今日の手間賃。大銅貨1枚ずつ。
自分で作って売ればそのほうが儲けになりそうだが、今回は勉強のために連れてきているので問題にはならないし僅かな時間でこれだけ貰ったのだからむしろこの世界では貰いすぎといえる金額だ。
だが、初めて貰ったお金にジョシュアは何と言うかうれしかったらしい。
あぁ、はじめてのお給料的な感じだろうか。
今までに貰ったどんなものよりも価値があったというのは後の彼の言葉。
この日を境にジョシュアはなぜか頻繁にリーベルの町の教会に遊びに来るようになる。
もちろん、帰った後でどこに行っていたのかとこっそりニコラウス様に絞られたのはジョシュアには秘密だ。
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