気が付いたら世界は滅んでた ~復興に勤しむ発掘屋の戦い~

高山 座歩里

西へ……

第1話 アバスクトリクス

2567年、世界は戦争の渦中にいた。


 増えすぎた人口は地球の資源を際限なく使い切り、世界を荒廃させていった。


 残りわずかとなった資源を奪いに各国が日本に戦争を仕掛けるのは時間の問題だった。


 日本は2523年に日本のある場所でしか採取することのできない新たな資源を発見する。


 発見したのは俺、新木 元治(あらき もとはる)だ。


 あの時はまだ、人類がこれからの世界で生きていく為にはと日夜、政界は世界中で議論をしており、平和的、友好的な解決策を模索していた。


 俺はそんな世界に関心を向けることはなく、ただただ趣味の発掘に明け暮れていた。


 因みに仕事は40歳ですっぱり辞めて、遺跡発掘補助員でアルバイトしながら残りの半分くらい残した人生を謳歌しようと考えていたところだった。


 遺跡の発掘調査や、古生物化石発掘調査などが基本的に俺がやっていたところだ。


 まぁ遺跡の発掘で遺体を見つけた時はさすがに少しビビったが、結構歴史的大発見になっていたそうだ。


 あれから15年。


 世界はあっという間に大飢饉。道端で子供が食べ物を恵んでくれと頼みこんだり、栄養失調で動けなくなってしまったり。死者だってもう数え切れない……


 しかし、あくまでそれは世界での話。


 日本は俺が見つけたこの鉱石、アバスクトリクスはすごかった。


 俺は暇と金を持て余していたので、適当に近くの古墳に忍び込み探索をしていたのだ。


 行き止まりにぶつかった時、大きな地震が発生した。


 さすがにここでこの状況。俺は死を覚悟した。大きく後ろに尻餅をついたとき、行き止まりだった壁が崩れ、中から新たな道ができたのだ。


 地震はすぐに収まり、俺は新たに出てきた道を進むことにした。


 地下に続く長い階段を抜けた先には光り輝く鉱石が敷き詰められた部屋に抜けた。


 俺は驚愕した。それは宝石の輝きとは違う。宝石は外部から光を浴びることで美しく輝く。


 この鉱石は、それ自体が青い光を放っていて、永久に消えることはないのだ。


 少量を持ち帰り、俺なりに研究した。


 とても不思議な物体だ。放置しておくと勝手に増える。熱すると溶ける。一度溶けたらどんなに冷やしても固まることはなかった。舐めてみたら甘かった。硬度は、かなり固い。というか固すぎて硬度が分からない。


 何をしても一向に欠けない。俺が持ち帰った物は床に落ちていたほんの一欠けらだが、どんなに叩いても全く欠けることはなかった。


 暇だから少し埋めてみた。一週間後にはヘチマの様な実が出来た。食ってみたらグレープフルーツのような味がして普通にうまかった。実の中にこの鉱石が少量入っているのが気になったが、俺は丸ごと食える。


 どんな土壌でも育つのか、砂の中に埋めても水なしで勝手に育つ。何も世話をしないと寿命は大体三カ月だ。


 この発見が大発見となり、俺は一躍有名人になった。しかし、この鉱石の決定的弱点として、日本のある場所、詳しく言うと俺の近くでしか育たないことが判明した。


 それが何故なのかは俺にもわからない……まったく解明されなかったのだがとりあえず日本は現状を打開する新たな物資を手に入れることになる。


 日本はそれを世界に渡さず自分たちだけの物として他国に渡すことはなかった。渡しても有効活用できないのだから俺も仕方ないとは思っていた。


 が、世界はそんな日本を決して許さなかった。


 俺がアイドル公開オーデションに暇つぶしに遊びに行っていた時のことである。


 なぜアイドル公開オーデションに行っていたのかというと、好きだからである。


 歳をとると、こういう健気に頑張っている子を見ると元気が湧いてくるのだ。あざといものはすぐに見分けられるようになる。


 友達が行くっていうので、便乗させてもらった次第である。


「エントリーナンバー13番! 常坂あかね! 16歳! 特技は暗算です!」


 うーん、なんかぱっとしないけど……でもこのくらいがあざとさもなくてちょうどいいかなー。今回はこの子に一票かな……。まぁグランプリは無理だろうな。最近の若者受けはしない気がする。


「エントリーナンバー21番! 相沢佳凛! 18歳! 特技は変顔です!」


 あざといっ! 見事にあざとい! 茶目っ気を出してこれくらいしか特技がないんですよーみたいな空気を出しているが、あれは明らかに自分が可愛いのをわかっていてやっているギャップ萌えならぬ、ギャップ後出しだ! こういう感じはみんなわかっているから、こいつもグランプリは無理だろう。


 そんな感じでオーデションは終わりに近づいていった。グランプリの発表には審査員の票と、観客の票を総合して一位を決める。


 とは言っても、たぶんテレビ的にすでにグランプリをとる子は決まっているのだろう。こういうやらせがないと、番組が盛り上がらないのは昔から変わらない。


 審査員の元有名アイドルが壇上に立ちグランプリの発表を始める。


「決めるのは非常に難しかったです……」


 完全なる定型文を前置きにしているのが少し腹立つ。


「グランプリは……エントリ―」


 ドゴォォォォォォォン!! ガガガガガガガッ!! ドガァァァァァァァァ!!


 会場が急に停電して、轟音と共に辺りが消し飛んだ。


 突然俺の目の前で青い光が輝いたかと思うと、辺りが爆発を起こし俺は意識を飛ばした。


 「はぁ……こんな人生の幕の閉じ方か……」


 と、心の中で思ったがいい人生だったなと思って気絶することにした。


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