第92話

 庭では花々が咲き誇り

 甘い香りを漂わせていた。



「夫が自宅に来たんだ。彼の恋人が癌で、あまり良くないみたいなの。それで相談に来たの。私は家族として彼を支えたいし、出来る限りのことはしたいと思う。リツが心配するようなことはないから、信じてくれる?」


「自宅に泊まったの?」


「うん」


「何も……無かったよね?」


「あのね……彼、今はゲイなの」


 リツには知らせると許可は取ってある。


「……え?」


「今の恋人は男性なのよ」


 私は二人の画像を見せた。


「……どういうこと?」


「目覚めちゃったみたい」



 とにかく今はさくらの家だし、帰ってちゃんと話すということでなんとか落ち着いた。



 リビングに戻ると食事の準備が出来ていた。

 私達は思出話に花を咲かせた。Wリツはやっぱり気が合うようで、音楽や仕事の話で盛り上がっていた。サッカーにも誘ったみたい。


 満月が優しく輝く、いい夜だった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 遅くにリツの自宅へ戻った。

 かなり酔っぱらってるなー。話は今日は無理ね。

 シャワーを浴びてベッドへ。

 リツがシャワーを浴びている間に今日撮った画像を見返す。Wリツ、ウケる。


 シャワーから戻ったリツが、そのまま襲いかかって来た。


「ちょっと! 何!」


「もうムリ。まだ待てとか言うのか!?」


 そんなに焦らなくても


「リツ、浮気してないの?」


「するワケないだろ!?」


 そんな律儀な男だったかな?


「ココさんしてるの?!」


「してません」


「ホントに? 怪しい!?」


「ホントです」


「なんで敬語なの?」


 リツ、やっぱり可愛い。


「ホントだよ。確かめてみて」



 首筋からゆっくり味わうように降りてゆく


 爪先までいくと、今度は後ろ


 隅々までキスして戻ってくる


 深く受け入れて、抱きしめる


「……あ…っ」


 昇りつめてゆくと

 ブルーベルベットが見えるようになった

 思っていた質感とは少し違う

 獣の皮毛のようなものではなく

 どちらかといえば蝶の鱗粉のような

 限りなく黒に近い

 深い碧

 蝶が羽ばたく時の煌めきのように

 波打つあいまに玉虫色の煌めきが覗く

 その煌めきがたかみへといざな

 煌めきを見たくて追いかける

 碧い闇の中を

 彷徨さまよ






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