山田の場合
「はい、よろしくお願いします」
僕はそう言って電話を切った。
よし、準備は完璧だ。
美香の喜ぶ顔が目に浮かぶなぁ。
一週間後、僕は美香をプラネタリウムに誘った。
「懐かしいね、あれ以来だよね。一年振り?」
そう、あれからちょうど一年。
今日は僕の童貞卒業一周年の記念日だ。
僕達はあれから何度も肌を重ねた。
彼女いない歴=年齢の寂しさを取り戻すように、僕は美香を無尽蔵に求め続けた。そして美香はいつもそれに応え続けてくれた。
それだけでなく、明るい美香は引きこもりがちな僕をリードしてくれた。今までやり残してきた事、例えばカフェでのおしゃべりとか、買い物デートとか、そういう事を1つ1つ二人で楽しんだ。そのおかげで、人間的にも成長出来たと思う。
今日はその感謝の気持ちを込めて、美香に飛びきりのプレゼントを用意している。
「この後、あのホテルで食事しようよ」
「ほんと! 嬉しい。あのホテルも一年振りだね」
ディナーの後はbarで『夜の帳』を飲んで
その後は……
「じゃ、行こうか」
僕は美香に肘を向けた。
「……もしかして?」
「うん、取ってあるよ。セミスイート」
美香は僕に飛び付いてキスをした。
成長したなー、僕。
こんなデートを準備出来るなんて、自分で自分を誉めてやりたい。部屋には薔薇の花束とシャンパンも用意してもらった。完璧だ。僕達は世界でもトップクラスの夜景をバックに抱き合ってキスをした。
シャワーを浴びて、シャンパンで乾杯した時、美香が言った。
「実はね……私からもプレゼントがあるの」
「え!? 美香も用意してくれたの?」
「うん、ちょっと待ってて」
美香はバッグから何か取りだし、後ろ手に隠しながらやって来た。
「目を閉じて」
僕は言われた通り目を閉じた。
「いいよ」
美香が僕の前に片膝をついている。
バスローブから覗く太腿がまぶしい。
いやいや、太腿じゃなくて、美香が手に持ったものを差し出している。これは何?
小さな箱?
美香がパカリと箱のフタを開けた。
「私と結婚してください!」
えーーーーーーーーーーーっ!
美香!?
どうした!?
小さな箱の中には指輪が入っていた。
「ど、どどどど、どうして?」
「ダメ?」
美香が泣きそうな顔で小首をかしげる。
「だっ、ダメじゃないよ、でもなんで?プロポーズは僕が……」
「だって、したかったの」
「だから何で?」
「あなたを幸せにしたいの」
「美香……」
「あなたを幸せに出来るのは、私じゃなきゃ嫌なの!」
僕の瞳から涙がこぼれた。
翌朝──
僕達はホテルのブライダルサロンで
人前式の予約をいれた。
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