第49話
「リツ兄ちゃん、お馬さんして!」
「ダメ!私とババ抜きするの!」
「はいはい、順番ね」
「リツさん、それが終わったらゲームしよ」
リツが子供達に引っ張りだこなのを見ながら、僕達三人はダイニングで宴会。さくらさんは手際よくどんどん料理を出してくれている。
「イケメンは子供にもモテんだなー」
「リツくん、面倒見いいね」
「そうですね、親戚で集まったときも子供達はみんなリツに群がりますよ」
「何だよ、もう俺には見向きもしねぇ」
佐藤さんは、シルバーバックを小さく丸めて寂しそうだった。
「ハイボールおかわり!」
「ハイ! 喜んで!」
「お酒も作ってくれるし、よく動いてくれるよ」
ハイボールを持ってリツが来る。
「仕事離れたら自分が一番年下なんで動きます!」
「いいねー! その体育会系精神!」
「あざーす!」
違う。おまえはさくらさんのそばに居たいだけだ。
藤木さんの肩越しに、キッチンにいるさくらさんとリツが見える。
リツがさくらさんにあーんをねだっている。
さくらさんが箸で唐揚げを摘まんで、リツの口元へ持っていく。
まずい……藤木さん、今振り向かないで。
「藤木さん、コレすごくおいしいですね!」
「それウマイよね。俺も好き」
取り皿に料理を取り分けて、藤木さんに手渡す。リツは嬉しそうに唐揚げを頬張っている。なんで俺がフォローせにゃならんのだ。
イチャコラするな!早く離れろ!
☆☆☆◆◆◆☆☆☆◆◆◆☆☆☆◆◆◆☆☆
椅子で寝てるアニキと佐藤さんを和室に連れていって、藤木さんは寝室へ行くように促した。流石に二人の寝室は直視できない。
リビングで片付けている花さんを手伝う。
「さくらさんって言うんだ」
「そうなの」ふふっと笑う。
「会いたかった」
皿を洗うさくらさんを後ろから抱き締める。
「ダメですよ」皿洗いの手を止める。
「少しだけ。俺、今日頑張ったでしょ?ご褒美」
「少ししたら、おしまいにしてね」
「なんか、子供に言うみたいだな」
一年ぶりの花さんの柔らかな温もりに、安堵と眠気が襲う。この温かさに包まれて眠りたいと何度願ったことか。
「眠くなったから、ひざまくらして」
「ほんとに子供みたいね」
久しぶりのひざまくらで、子供のように眠る。
さくらさんが優しく髪をなでる。
なんだろう、この感じ……
すごく温かくて気持ちよくて安らぐ。
これが『幸せ』ってヤツなんだろうか。
快楽とも、快感とも違う心地よさ。
俺は今までにないくらい
深い眠りに落ちた。
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