第2話 おつかい

 俺は青龍村のウィン!


 ちなみに16歳で剣士を目指している。


 今、俺のいる世界が危機に瀕している。その理由を探るために、旅に出ることになった。

 そもそも、この世界の危機って何なのかを話しておこう。


 今、この世界では「水」が急速になくなっている。


 そして、水が無くなるということは、生き物が生きるのが困難になるということ。現に、人口も以前の10分の1にまで減ってしまった。食べるモノも無くなってきている。

 そして、温和だったモンスターが人を襲うようになった。「水」これ程生きるうえで必要なものはない。

 水が無くなるのが、誰の目にも明らかになる頃には、人と人による水の奪い合いが始まり、争いが起こった。水が無くなれば、作物も育たない。

 餓死・貧困・戦によって、命を失うもの、病気が蔓延し、沢山あった町や村は荒廃し、生き残りは極僅か。

 それでも、これまでいろんな人々と協力して、何とか生き延びてきた。大分モンスターの襲撃も、争いも、落ち着いてきたし、町や村の復興も、なんとか進んで、パニックも収まってきた。


 なぜ水が急速に無くなるのかは、分からない。


 しかし、ここ数年でその速度が速くなったというのは確かだ。

 そして、水が無くなる事がモンスターの凶暴化に関係がある。そう言いきれる理由は、5年前のあの日、身をもって感じたからだ。


 5年前…。


 当時、俺は11歳だった。


 よく近くの森に遊びに行っていた。森の池で遊んでいた時に、前に来た時と違っていることに気がついた。


「あれ?ここ、いつもと何だか違うな…。あっ!水だ。池の水が減っているんだ!」


 でも変だな。きのうも雨が降っていたのに、お水が減っているなんて…。


 池の水だけじゃない。


 その頃から世界から水が無くなっていた。


 そして、池に近づいた途端に、それは起こった。


バシャン


 いきなり何者かが水の中から現れた。


「ミ…ズ…水ヲ……かえせ!」


「えっ…何?」


 僕は、何が起きたのか分からないままモンスターがいきなり、襲い掛かってきた。


「ニン…ゲン、おマエらの…セイだ。ニンゲン…ユルサナイ!!」


 何が何だか分からなかった。


 とりあえずヤバイ!それだけは嫌でも分かる。逃げようと思ったけれど、逃げる事さえできなかった。


 僕は、がむしゃらに攻撃をした。


 しかし、武器もなく到底適うはずがない。攻撃は全く無意味となった。


 そして、僕は為す術もなくモンスターに一撃でやられてしまった…。


「うわぁあぁぁあ!!」


 やられたはずだった。僕の意識が遠のく間際に、声が聞こえた。


「…もう大丈夫だよ。」


 とても暖かく、そして懐かしい声が…。


「えっ?」


 そして、僕の意識は深く沈んでいった。


「………。」


 目が覚めた時には、まるで何も起こらなかったかのように、とても静かで、ただ、恐怖と助かった安堵感が複雑に入り混じっていた。


「い…生きている…僕…一体…何だったんだ?…あれ?何だろう。」


 僕のすぐ側にペンダントらしき物が、落ちていた。


「さっきまでは、無かったのに…」


 あの時助けてくれた声の持ち主が、落としていったのかな。


………。


 あの時は、何が起こったのか全く分からなかった。

 だけど、時が経つにつれて、分かるようになったんだ。あの時モンスターは「水を返せ、お前達のせいだ」と言っていた。

 もしかすると、俺達人間が、何か、大変なことをしてしまったのかもしれない。その原因を突き止め、直すことができたなら、モンスターの凶暴化は止められるはず。

 そして、水がどこへ消えているのかも。


 それに、あの時、誰かに助けてもらった。とても、とても温かくて、懐かしい気がした。旅をしていれば、いつか会えるかもしれない。落し物も、返さなきゃいけないし。


 水が無くなる原因を探る為の旅。


 モンスターの凶暴化を止めるための旅へ。


 …まずは、村長に会いに行こう。


 家を飛び出し、村を見回す。そして、とてつもなく重要で、当たり前なことを忘れていることに気がついた。


「村長へ会いに行こう。」


 そう意気込んで家を出たのは良いのだが…

 そもそも、村長の家がどこにあるのか知らないんだよな。

 ここは、RPGの基本。聞き込みから始めるとするか。近くにいる人から聞き込め!だな。おっと、丁度良いところに近くのおばさんが。


プチ(怒)


 いえ、きれいな…お姉さんが(笑)いらっしゃるので、聞いてみよう。


「あら、ウィンじゃない。どうしたの?」


「村長に会いたいのですが、俺、どこにいるか分からなくて。」


「村長…あの人、気難しいというか、変人ということで有名な?やめておきなさい。今では、誰も使えない力を使えるって言うし。」


「どうしても俺、知りたいんです。水が無くなってしまう理由を。」


「分かったわ。でも、村長に会うには鍵を見つけないと。」


「…鍵ですか?」


「そうよ。間単には入れないように、罠が仕掛けてあるの。鍵が見つかれば、きっと会えるはずよ。」


「分かりました。鍵を探してみます。」


「村長の家はこの地図の上から1番目右から2番目の所よ。」


「ありがとうございます。」


「気をつけてね。」


 とりあえず、村長の家の場所は分かった。でも、家にトラップ(罠)を仕掛けるって、どれだけ厳重なんだ?

 もしかして、何か重要なものが隠されているとか。


………。


「だぁーー。見つからない!!一体どこに隠しているんだよ。」


 村中どこを探しても、全く見つかる様子がない。そもそも、藁の山の中から1本の針を探すようなものだろう。


「…こうなったら、いちかばちか、村長の家に乗り込んでみるか!!」


 村長の家は、この地図の上から1番目右から2番目の家だったよな。

 とりあえず、鍵も見つからないので、村長の家に向かうことにした。うーむ、確か、トラップがどうとか言っていたよな。

 一体、どんな罠が仕掛けてあるんだろう…と、考えている間に村長宅に着いてしまった。


 とりあえず、ノックして。


「村長!俺、この村に住んでいるウィンといいます。お話ししたい事があるので、中に入れてください。」


 なんだか、ドアに話しかけている気分。実際にそうだし…。


 まぁ、とりあえず、自己紹介もしたし、トラップくらい解除してくれているよな。と、思ったが、やっぱり甘かったらしい。

 ドアを開けた瞬間、俺は中の様子に息を呑んだ。


 驚かされるなんてものじゃない。


 そう、まさに次元が違うと言っていい。


 中は、異次元のような、何があるとか、無いとかの問題じゃなく、そもそも、足場は在るのかさえ、不安になるような、そんな場所だった。

 家の中に、こんなの創るなよと心の中で悪態をついた。

 すると、紙が中から飛び出して、俺の頭にぶつかった。


 …迂闊だった。


 ただの紙だと思ったら、ばっちり石が入っているじゃないか!!文句を言いたくもなったが、どうやらメモらしい。

 えっと、なになに、米・牛乳・ニンジン・ジャガイモ・タマネギ・牛肉・カレー粉


「…って、カレーの材料かよ!」


 ん?裏に何か書いてある。


 おいしい水と卵を3つもらってきてくれ。なんじゃそりゃ!

 これは、つまりお使いに行って来いと。そういうことなのか?


 あれ、まだ何か書いてある。


「鍵はそれを集めていると見つかるかも♪」


かも♪…かも♪…かも♪…かも♪ってなんだー


しくしく。


 くぅ。こんなところで、嘆いている場合じゃない。集めてやろうじゃないか。

 このやろう!首を洗って待っていろよ、村長!!

 こてんぱんにのしてやる。←目的違

 そんなこんなで、カレーの材料を集める事になった。こんなに小さな村で、全部集まるかどうかが不安ではあるが、とりあえず、やるしかない!

 俺は、村長に会うのがこんなに大変なRPGってあるのだろうかそして、なにより村長がこんなギャグで良いのだろうかと様々な疑問を抱え、材料集めにいざ出発。

 村の外に出るときは、装備を整えていかないといけないな。家の中に何かあるだろうか。

 とりあえず、見てみることにした。張り切って家を出たのに…と、ちょっと情けない気分になった。

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