第30話 勇者ちゃん、もう一人の勇者ちゃんと会う。③
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『そう、それは私達も知らなかった情報。局長には私から報告しておく』
授業を終えて、放課後。
場所は校庭の隅の大きな木の下。
俺は自分のMaRQを耳に当てて、南条さんへと思念を用いた通話で今日の事を報告している。
各国秘匿のオカルト技術が一般に流出した事により、思念波を用いた連絡手段は最早常識的に普及した。
電波や地形に左右されず、触媒であるMaRQさえあれば誰にで使用できる、オカルティックサイエンスの最たる技術だ。
俺らみたいな裏稼業の人間にとっては、数十年前から当たり前に使用していた物で、極端な話M aRQを使わなくても使用しなくても行使できる技術なのだが、せっかく楽に使えるガジェットがあるならそっちを使いたい。
盗聴・妨害を避ける時なんかは、秘匿チャンネルをしっかりと利用してるし、要領良く生きていかないとな。
「一応、詳しい話はこれから聞く事になってるんだ。なんでこのまま局にアムを送り届けたら、しばらくは連絡がつかないかも」
『この任務の裁量権は貴方にある。任せるから、上手く立ち回って欲しい。それで、その『神剣の御使』って娘は、今どうしてる?』
グルンと振り返って、本校舎の玄関で俺を待つアムを見る。
今日知り合ったクラスメイト達と楽しそうに談話しているアムの足元で、ディアはどことなく嬉しそうにして佇んでいた。
「今んとこ、俺かアムからは一切離れないって感じかな。
俺の知らないところであんな物騒なのバンバン打たれても困るしな。
『お願いね。今日の報告書は明日の夜までで良いから、貴方はその淡島さんからできるだけ穏便に情報を聞き出して。貴方の話だと、その子はかなりまともな子って印象を受ける』
「淡島? ああ、アイツなら本当に大人しいいい奴だ。性格も守備的だし、人の話もちゃんと聞けるし」
最近の俺の周りの女性は人の話も聞かずに猪突猛進する奴らばかりだからな。
アイツの存在は俺の心の清涼剤でもあったんだが、こうなってしまってはどう転ぶかも分からん。
なので俺は今、ちょっと悲しい。
『ディア、ちゃん? 彼女の説明だと、御使の姿を見る事の出来る勇者はそれなりに力を持っていると思われる。もしかしたら、グランハインドさんと同等か、それ以上の力を持っててもおかしくない』
「そんな存在が国内にいるなんて、
『そうね。ただ、そういうのも有り得るのが、この世界。一応、気をつけて任務に当たる事』
「了解。じゃあ切るぜ?」
これから本局のある霞が関までアムを送り届け、またこっちに逆戻りだ。
ほんと休む暇が無い。
唯一の救いは車で移動できる事だろうか。
電車嫌いなんだよな俺。
『あ。そういえば』
「ん? なんです?」
南条さんが連絡ごとを忘れるなんて珍しいな。
なんだなんだ?
『流華ちゃんからメールが来てた。なんか凄い怒ってて読み取れなかったんだけど、アレ何?』
「気にしないでください。ただの病気です」
まだ怒ってたのか愚妹めが!
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