第二章
第18話 妹ちゃん、宣戦布告する。①
「はい、はいそうです。すみません社長」
右耳に当てた
『ん。かまへんかまへん。こっちだって働かせすぎて申し訳なくおもっとったからな〜。しばらくゆっくりしぃ』
間延びした怪しい関西弁の、明るい返事が返ってきた。
電話の相手は俺のバイト先の社長だ。
特殊すぎる俺の事情を全て汲んでくれて、融通をつけてくれる物凄いいい人で、お袋の知人でもある。
本当に頭が上がらない。
「落ち着き次第、また復帰するんで。ありがとうございます」
『ええよええよ。んじゃあ、また出れる様になったら連絡ちょうだい。よろしく〜』
「はい、失礼します」
通話を終えて、ズボンのポケットにMaRQをしまう。
はぁ、とりあえず今日やるべき事は全部終わったかな。
アムへの学校案内を二、三時間ほどで終え、俺は今家路についている。
朝の一件以外は目立ったトラブルもなかったし、本当に一安心だ。
アイツは局の人が車で迎えきたし、あとはもう帰って寝るだけ。
池袋から電車で10分、西武池袋線『江古田』駅から歩いて10分。
環状七号線からちょっと離れた閑静な住宅街。
そこに俺たちの住むマンションがある。
8階建てのファミリータイプのこの家は、雷火の保有する不動産資産の一つだ。
最上階をワンフロア丸々住居としてるのも、雷火の家が俺達を監視しやすくする為の処置。
言っても、住んでる俺らはそう不便を感じていない。
出来るだけあの家の援助に頼らず生きようとはしているものの、損得を取捨選択して必要なものは全部貰ってしまおうと言う姿勢は、流石バイタリティ溢れるお袋の手腕だ。
オートロックのロビーを抜け、エレベーターで最上階へ。
最新のエレベーターはあっという間に目的のフロアへ到着し、降りてすぐの自宅玄関のドアに鍵を差し込む。
ん?
施錠されて、ない?
おかしいな。
お袋は仕事に行ってるはずだし、妹の流華は学校の時間だ。
──────外から室内を霊視してみても、特に怪しい気配は感じない。
一応、警戒しておくか。
ゆっくりと音を殺しながら、ドアを開ける。
いつもと変わらない玄関と廊下。
リビングに繋がるドアも開きっぱなしだし、トイレのドアも開きっぱなしだし、なんなら俺の部屋のドアも開きっぱな──────おい。
なんで全部全開なんだよ。
「…………誰か、居る?」
リビングの奥に、人の気配がする。
おかしい。さっき霊視した時には全く感じなかった。
俺が玄関を開けた瞬間に、気配が急に現れた。
呪系戦闘人形である俺の五感は、普通の人間のソレ問いは段違いで敏感だ。
特殊な訓練を受けている者や、武芸武術の達人らの気配となると話は別だが、強盗や空き巣程度の違和感ならすぐに気づくはず。
靴も脱がずにゆっくりと、室内に入る。
俺が本気を出せば、南条さんみたいなプロの忍者も時に欺けると自負している。
二、三歩と廊下を踏みしめたその瞬間、リビングの気配はまっすぐに俺に向かって走り出した。
すぐに迎撃できる様、身構え──────。
「おにいちゃあああああああああん!」
「──────
ドタバタとうるさい足音を立てながら、我が妹である
なぜか、パンツ一枚の姿で。
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