第8話「素直になるには」

 喧嘩をした理由、考えるまでもなく私だ。私が変に逆上したとか、そういうことを言いたいのではない。私が、素直になれずに、それを直すこともしない。そのくせ一人前にそれをダメだと言い切ってしまった事だ。

『もう電話もかけてこないで』

 愛優が出ていって一週間が経った頃、私が電話をしようとスマホを開くと、新着メールでそう送られていた。一言だけ、そう添えられたメールに、私はため息をこぼす。もう、全てが終わってしまったのか。

 素直になれなかった自分を呪う。が、これで終わりにしていいのだろうか。それで、私は満足できるのだろうか。

「素直になるには、どうしたらいい?」

 独り自分に問いかける。素直になれなかった自分が、素直になる方法。そんなの、私は学んでない。誰も、学校でも、教えてくれなかったから。なんて、言い訳だな。

「ダメだからやらないじゃ、いつまでたっても何も出来ない。のかな」

 そう思い、返信画面を開いて拒否のメッセージを打とうとする。何を、どういえば良いだろうか。じっくり考えて、言葉を選ぶ。

『私は絶対やめない。それに、愛優を連れ戻すまで、諦めないから』

 私がこんな言葉を、必死な意志を、誰かにみせたことがあっただろうか。いや、ないな。それだけ必死で、彼女に夢中なのだろう。素直になる、準備をしなくては。

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