VS 大盗賊(?)アイオーン!③

アイオーンの効果による攻勢を切り返した最強デュエリスト。

だが、そんな彼をアイオーンは嘲笑う。

果たして、どのような戦術で反撃しようというのか!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




状況を確認しよう。

僕の場には、《森を守るもの 1/1》と、伏せが1枚。

アイオーンの場には、伏せが1枚と、手札が1枚。


戦況は拮抗していると見ていいハズだ。

それに、僕の伏せは《迎撃の罠》。この罠を攻撃したユニットに、2ダメージを与える。

この布陣、突破できるはずがない。できるものならやってみろ!


―――アイオーンのターンがはじまる。


「ドロー!」


アイオーンはデッキからカードを引くが、それには目もくれない。

どうやら、戦術はすでに決まっているらしい―――!


「伏せていた《夜を待つ略奪者ローグ》をオープン!」


物陰より、音も無く略奪者が姿を現した。

辺りは暗くなり、鋭い目が怪しく光る。


「《夜を待つ略奪者ローグ》のレイド発動!自分からオープンした時、相手の伏せを1つ破壊し、能力値を+2/+2する!」

「なんだって!」


《夜を待つ略奪者ローグ》が2/2となり、さらに僕の伏せに向かってナイフを投げる!

迎撃の罠はそのナイフに反応し、虚しく空振りして消えた。


「ほー、《迎撃の罠》か。だが、この効果は攻撃じゃあねえからなあ。ヒヒッ、残念だったなあ」


ニヤけるアイオーン。

そうだ、僕の罠が空振りし、《夜を待つ略奪者ローグ》が《森を守るもの》を超えるパワーに強化された。

これは、僕の絶対的に不利な状況を意味する。


―――僕のプレイミスだ。

《夜を待つ略奪者ローグ》は、自分から動かねば効果が発動しないというリスクを持つかわり、効果が強力なユニットなのだ。

前のターン、アレを攻撃しておけば、この状況はなかった―――


アイオーンは僕の様子をじっくりと見ている。

どうやら、僕のそんな後悔を想像して、楽しんでいるようだ。


「さっきのターン、ああしておけばよかった―――ってか。ヒャハハ!ザコはな、みんなそう言って俺サマに負けていくんだよ!」


《夜を待つ略奪者ローグ 2/2》が《森を守るもの 1/1》を攻撃する!


「さあ、攻撃力の超過分、1のライフダメージを受けな!」


《森を守るもの》を倒し、さらに《夜を待つ略奪者ローグ》は僕に襲いかかる!

しかし、その刃は、僕にまで届くことはない。

《森を守るもの》の効果だ。このユニットでの戦闘では、プレイヤーが受けるダメージは0になる。


「ちっ、セコイ効果を使いやがるぜ」


アイオーンが舌打ちする。


―――見えた!

いまの攻防で、僕はようやく、ゲームの勝利条件を掴んだ。


ライフ制。

超過ダメージや直接攻撃によって、プレイヤーのライフを0にして勝利する。

現実世界でもよくある、ライフ制ゲームの勝利条件だ。


僕に5というカウンターが表示された。

これがライフということだろう。

つまり、さっきのような攻撃を5点分通せば、勝敗が決まるということだ!


形勢はかなり不利ではある。

しかし、僕はようやく、このゲームのルールの把握というところでは、アイオーンと対等になったということだ―――!


アイオーンは、僕のそんな考えに気付いてか「気に入らねえ」と呟いた。


「場にはなんのカードもねえ。手札もねえ。それなのに、嫌な目をしやがる」


そう、僕はまだ、諦めていない!


「なら、諦めがつくようにしてやるよ!この、俺サマのエースカードでな!」


アイオーンが手札のカードを掴む。


「《夜を待つ略奪者ローグ》をコストに!レベル2ユニット《【紅眼レッドアイカードを奪う賊カード・バンデット》を召喚!


略奪者が闇に飲み込まれる。

その闇から、血のように滾る、飢えた紅い瞳を持つ怪物が現れた。


「―――ああっ!その怪物は!」


それまで、僕とアイオーンの【決闘ドゥエル】を黙して見ていた少女が、恐ろしいものを見るように口を開いた。


「その紅い目の怪物は、忘れもしません!村の人たちを、消してしまった―――!」

「あぁん?村の人たち?そんなもんはいちいち覚えてねえがなあ、こいつには、カードを消す能力があるんだぜ!」


カードを、村人を、消す?

禍々しく紅い眼を光らせる怪物からは、確かに尋常ではない迫力が感じられた。


「ヒャハハ!コイツが場に出たら、もう終わりよ!ハンパなザコカードじゃ、手も足も出ねえからよ!」


アイオーンは勝利を確信しているようだ。


カード無し、手札無し、それでも僕は―――


「カードを信じる!」


僕とアイオーンの【決闘ドゥエル】の行く先―――

少女の言う紅い眼の謎―――


すべて、僕のドローが切り開く!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




■用語説明

①ライフ

-命

-ゲームにおいても、プレイヤーの残りの命をさす。

-5点から始まり、ダメージを受けることによって減る。0になると敗北となる。


②【紅眼(レッドアイ)】

-血のような紅い眼を持つ怪物の総称。

-カードや人などを、消してしまう能力があるらしい。

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