えぴそーど、じゅうよん。ねむるぎしきがひつような、ようじょ。

 

 こんにちは。猫田パナです。


 私があまりこのエッセイを更新しないでいるうちに、我が家の幼女は四歳になりました。

 私に似て背の高い娘……たけのこのようにすくすくひょろひょろ育っています。

 しかし、背丈は大きくても四歳になったばかり。まだまだ、色々と手がかかります。


 中でも一番の労力なのが、眠る前の儀式……。

 様々な過程を経て、ようやく幼女は眠りにつくのです。



 夕ご飯を食べ終えると、まず娘をお風呂に誘導する必要があります。

 でも、なかなかすんなりとはお風呂に移動してくれません。


「お風呂に入ろうよ~」

「やーだ、まだはいらないから。パナ子まだ遊びたいだから」


 ぐぬぬ……。

 なんとかお風呂を楽しそうに感じさせないと、お風呂に入ってくれないのです。


「あ、じゃあさあ、泡のお風呂で遊ばない?」


 我が家では最近、クナイプのバスミルクというのを使って、よく泡風呂をやるようになりました。

 バスミルクをお風呂に投入し、シャワーを当てるとお風呂が泡だらけになり、娘は「雪みたーい!」と大喜び。

 お肌もしっとりするし、バスボムを買うより経済的なのです。

 でも、それも毎回通用するわけではなく……。


「パナ子、泡のお風呂、すぐ熱くなっちゃうだから。あんまり遊べないだから」


 そうなのです。泡のお風呂は保湿成分のせいか普通のお湯よりポカポカ身体が温まり……。娘は私より暑がりなので、身体が温まるのは好きじゃないようなのです。寒い季節ならいいけれど、段々あったかい日が増えてきたしなあ。



「じゃあ、金魚のお風呂にして捕まえてコップに入れるのはどうかな?」

「それ……面白すぎるだけど!!」


 うちにはネットで購入した大量のおもちゃの金魚がいます。スーパーボールみたいな素材でできている、色とりどりの小さな金魚。娘はそれが大好きなのです。


 さっそく金魚とプラスチックのコップとおたまを持って、娘とお風呂に入ります。

まずは全身を洗って……。


「ギャー!やーだ!やーだ!ブエエエエエエエエエエエエン」


 幼女、めっちゃ嫌がります。


「はーい終了。じゃあ湯船入ってくださーい」


 娘は湯船に入るとすぐに、バーっと金魚をお湯にばら撒き、真剣な表情でそれをおたまですくい、コップに移し替えはじめます。

 そしてひとしきり遊んだあと……。


「もうお風呂出ようよ。ママ暑いからもう出たいんだけど」

「やーだ、やーだ」


 お風呂を楽しくしすぎると、今度はお風呂から出なくなってしまいます……。


 そしてお風呂が終了すると、今度は歯磨き。


「ポケモンの歯磨きする?」

「うん!」


 ポケモンの歯磨きアプリを起動し、歯磨き開始。

 しっかり歯ブラシを動かすと、ポケモンを捕まえることができます。


「ママ、このポケモンなに?」

「ん~」


 私はポケモンの名前など、ほとんど知りません。

 ポケモンGOは五、六年前からずっとやっていますが、未だにポケモンの名前はあまり覚えていません。夫に話をするときも「なんかクラゲみたいなやつ」「緑の芋虫」などと言っています。物覚えが悪くて、特に固有名詞が覚えられないのです。


「ママー、パナ子これ初めて見ただけどね。このポケモンなに?」


 娘が指さす画面には、青いソフトクリームみたいな帽子を被った、ピンク色の丸い顔のかわいいポケモンの姿が。


「ボーシボーヤ(帽子坊や)だね」


 私は適当に見たままの姿を表現した名前を答えました。


「ぶっ!」


 これに娘は大うけ……。娘の笑いの沸点はかなり低いのです。


「ボーシボーヤじゃないだけど! ちょっと面白すぎるだけどね」


 本当の名前がボーシボーヤでないことも、ボーシボーヤというネーミングセンスがダサいことも、なぜか四歳児にはわかるようです。


「じゃあ何ていう名前なの?」


 私がたずねると、娘はちょっと考えてから恥ずかしそうに言いました。


「ラプラス帽子」


 娘はポケモンの名前は、ピカチュウとラプラスぐらいしか知りません。知っているポケモンの名前と帽子という特徴をくっつけただけのネーミング……。な、なんて単純でおバカで可愛いんだっ……。


「えー、ラプラス帽子じゃないでしょー?」

「うひひひ……パナ子たち面白すぎるだけど」


 笑いが止まらない様子で身体を震わせ、大うけし続ける娘。

 その後調べたところ、そのポケモンの本当の名前は「マネネ」でした。


 それから、お布団に入ります。お布団になかなか横になってくれないので、また楽しいことを考えなければなりません。


「パナ子、マシュマロ猫のお話ししない?」

「いいよー」


 大体最近は毎晩、マシュマロ猫のお話しをしています。それはこんなお話です。


 あるところに、マシュマロ猫が歩いていました。すると向こうから、茶色の猫がやってきました。

 茶色猫はいいました。

「マシュマロ猫ちゃん、マシュマロちょうだい? かわりにチョコをあげるから」

「いいよー」

 マシュマロ猫ちゃんがあげたマシュマロを茶色猫ちゃんが食べると、ほわわわわ、ほわわわわ。茶色マシュマロ猫ちゃんになりました。

 マシュマロ猫ちゃんがチョコを食べると、ほわわわわ、ほわわわわ。チョコ入りマシュマロ猫ちゃんになりました。


 大抵この、どんな猫が向こうから来て何の食べ物をくれて、どんなマシュマロ猫になるかを娘に決めてもらいます。

 そしてマシュマロ猫ちゃんがいろんな猫と出会うたび、いろんな味が加わっていきます。


 ほわわわわ、ほわわわわ。チョコ入りでカラフルトッピングつきで焦げすぎ団子味のマシュマロになりました。


「焦げすぎ団子、面白すぎるだけど!!」

 

 娘はなぜか「焦げすぎ団子」をいたく気に入っており、毎晩マシュマロ猫ちゃんは焦げすぎ団子を食べることになります。


「焦げすぎ団子……ぎゃは、ぎゃははははは!!!!」


 大喜びして布団の上を転げまわる娘……。寝かしつけのつもりが、これでは逆効果。


「夜なんだから静かにして。もう遅い時間だからいい加減寝るよ」


 私が少しキレ気味になった頃合いを見計らって、娘は言います。


「じゃあママー、最後にピクニックの歌を歌ってー」

「それで終わりだからね」

「じゃあ、3! ピクニックを3回歌って!!」

「3回じゃ長すぎる。ママそんなに歌えない。喉が枯れる」

「3!」

「3は駄目、1回だけ!」

「3! 1だと短すぎる!」

「じゃあ2回なら……」

「うん」


 微笑みながら目をつぶる娘。今まで何度もこのやりとりをしてきましたが、このやりとりをするたびに、昔上海へ旅行に行き買い物をしたときのことを思い出します。


 中国の市場では値切って買い物するのが常識なんだって、と事前に聞いていた私は、人生初値切りを頑張っていました。

「○○元!」

 首を振り、電卓をたたいて数字を見せてくる店員のお姉さん。

「○○元!」「じゃあ○○元!」

 笑いながら頷くお姉さん。

 やったー! 最初に言った金額よりは高くなったけど、元値の半額になった! 私は思わず飛び跳ねて喜びました。

「アナタオモシロイ子ネ、ピョンピョン跳ネテ」

 中国人のお姉さんが、私の頭を撫でました。



「おかーをこーえーゆこーよー、くちーぶえーふきつーつー」


 大体二回歌い終えた頃、娘は眠りについています。


「やっと寝たか……」


 しばらく見守った後、私はそーっと布団から抜け出します。任務完了。

 毎日一人で勝手に眠ってくれる日は、いつになったら来るのかな?


 それでは今回はこのへんで。

 お読みいただきありがとうございました~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る