05.木野ミナト×大井悠 知らなかった③


「いらっしゃ~い」

「お、お邪魔します……」


 遠慮がちな悠ちゃんと一緒に、我が家へと帰ってまいりましたよ。

 まあ、我が家って言っても、賃貸のマンションだけど。


「適当にゆっくりしててね」

「あ、いや、手伝います」

「いいからいいから」


 手伝おうとする悠ちゃんを座らせて、私はキッチンへ。

 いつもは適当に野菜切ってお肉も放り込むだけだけど、今日は悠ちゃんを誘った手前、少しは見栄えのいいようにしないとね。


「悠ちゃんは、好きな物とか、逆に食べられない物ってある?」

「いえ、大丈夫です!基本好き嫌いは無いですから」

「りょ~かい~、好き嫌いが無いとは、偉い子だねぇ。」

「なんですかそれ」


 少しは緊張もほぐれたのか、ふわっと可愛く笑う悠ちゃん。

 まったく、この可愛い後輩ったら。


「好きな味とかは~?辛いの駄目とか無い?」

「あー……でも、辛すぎなければ大丈夫です」

「具体的に言うと?」

「一般常識的な範囲で、ピザやパスタにタバスコかけるレベルならOKです」

「了解」


 じゃあ、普通にチゲ鍋とかでも大丈夫そうかな……まあ今日は、チゲ鍋じゃないんですけどね。

 今回は、豚しゃぶ風鍋にしちゃいます。



 と言う訳で、木野ミナトの簡単お鍋のコーナー!(今適当に考えた)


 材料は、白菜、もやし、人参、えのき、しめじ、豚肉を用意します。

 それと、水、お酒(料理用)、白出汁、塩、すりおろし生姜(チューブとか瓶タイプが便利)


 とりあえず、野菜を切っちゃいましょう。

 白菜はたっぷり目に入れたいので、大胆に1/2使います。

 1/2に切った白菜を、もう半分に切って、さらにざっくりと切り分けます。

 所謂、一口大ってやつですね。


 人参も、皮を剥いて、こちらは短冊形に切ります。

 もやしとえのきは、袋から出して、軽くさっと洗うだけでOK。

 しめじも、適当に分けてさっと洗いましょう。



「そういえば、悠ちゃん」

「はい、なんですか?」


 切っている合間に、手持ち無沙汰にしている悠ちゃんに声をかけてみる。


「悠ちゃんは、なんでコンビニにいたの?」

「え」


 思い出せば、私は最初、ご飯とビールの為にコンビニに行ったんだよね。

 まあ、ビールが7割位メインだったけど。

 あとおつまみ。


「えーと、ですね」

「うん」

「そのー、ですね」

「うん」


 何故か、微妙な表情をしているけど?

 コンビニを利用するのに微妙な理由って何?


「…………晩御飯を」

「うん?」


 もじもじしながら答える悠ちゃん……かわいい。

 ではなくて。


「…………晩御飯を買おうと思って」

「うん」

「…………」

「え?それだけ?」


 別に恥かしがることでもないような……?


「ううっ」

「ええ!?なになに!」


 急にソファに突っ伏して呻きだしたよ?!


「これが女子力……つらい……眩しい……」

「ほんとにどうしたの?!」


 こんな悠ちゃん、始めてみたんだけど???


「仕事も出来てお洒落で美人で料理も出来る先輩との格差がつらい……」

「何言ってるの?!」


 褒めてくれてるのは嬉しいけど、買い被りすぎだからね?!


「別にコンビニで晩御飯済ませるのは、悪い事じゃないよ?私だって面倒くさい日は、コンビニで済ませるし」

「………………ホントウデスカ?」

「ホントホント、ワタシ ウソ ツカナイ」

「…………ワタシ シンジル」

「「…………ふふ、あはははははは!」」


 急な原始人ノリで、おかしくなって笑っちゃう。


「はー、笑った笑った、こんな悠ちゃん初めてみたよ」

「うう……!」


 もだもだしちゃう悠ちゃんにほっこりしながら、お鍋の準備を終わらせてしまおうかな。



 二人分なので、ちょっと大きめのお鍋に、水、お酒、白出汁、を入れて、塩とチューブのすりおろし生姜を一緒に入れちゃいましょう。

 そうしたら、これをひと煮立ちさせます。


 その間に、お皿とお箸を用意して、テーブルへ。

 ついでに、ポン酢、胡麻だれも用意しておきましょう。


 ひと煮立ちした鍋に、先に切っておいた野菜を入れていく訳ですが、人参は火が通るのに時間がかかるので、先に入れちゃいましょう。

 その後は、白菜とかもやしとか、全部入れてしまって、最後に豚肉で上を覆うように並べます。

 後は、具に火が通るまで、ゆっくり待ちます。


 以上、簡単お鍋のコーナーでした。(まだ続いていたのです)



 そんなこんなで、出来上がったお鍋をテーブルに用意した電気ヒーターの上に乗せ、保温モード。

 出来たて熱々のまま、美味しくいただいちゃいましょう。

 当然、ビール付きです。


 炊きたてのほかほかご飯と、出来たて熱々のお鍋。

 そして冷えたビールを、炬燵に入りながら頂く。

 これ以上の幸せがあるでしょうか。いや、無い。(反語)


 まあ、大袈裟だけど、それくらい暖かい食事って大事だと思うんですよね。

 しかも、可愛い後輩と一緒に食べるごはんが、美味しくない訳が無い!


「はい、悠ちゃんのぶん」

「あ、すいません……ありがとうございます」

「はい、召し上がれ~」


 お茶碗によそったご飯と、器に取り分けたお鍋の具を、悠ちゃんに渡して、自分のぶんも取り分けてしまう。

 ポン酢、胡麻だれ、の二種類を別の器に分けて、準備完了。


「いただきま~す」

「いただきます」


 そうして、二人の鍋パが始まったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る