03.木野ミナト×大井悠 知らなかった①


 夏の暑さはとっくに通りすぎ、秋―――どころか、一気に冬も近づこうとしている昨今。


「はぁ~……さっむ……」


 強い冷え込みに、震える体を無理矢理動かし、コンビニへ。



 いらっしゃいませー、の声を聴きながら、いそいそとお酒のコーナーへ。

 日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、ブランデー。

 色々なお酒はあるけれど、今日はビールの気分。


「ビール、ビール……と」


 せっかく休みの日に飲むんだから、ちょっとお高いヤツがいいよね。

 いつもは発泡酒だけど、今日はちゃんとビールを飲みたい。


「ご飯と、おつまみも」


 あったかい部屋で飲むビールには、やっぱりご飯とおつまみも必要でしょう。

 お腹いっぱい食べた後に飲む、一杯のビール。

 最高だよね。


 寒くなってきたし、一人鍋とかどうでしょう。

 簡単手軽に作れる一人鍋。

 今は、鍋の素とか売ってるし、食材だけ買えば簡単に出来ちゃうもんね。


 鶏がらスープの水炊き風、トマトチリスープinチーズ、野菜たっぷりちゃんこ鍋。

 う~ん、どれも美味しそうで悩むねぇ。


 ご飯だけ悩んでるわけにもいかない。

 ビールには、当然おつまみが必要なのだから。


 アーモンド、あたりめ、枝豆、おかき。

 チーズやチョコもいいよね。

 甘いのとしょっぱいので、交互に食べられちゃう。


(まあ、太っちゃうけどね)


 だけど、そんなの気にしてたらダメダメ。

 今日は、美味しく飲むんだから。


「どれにしようかな~」

「……先輩?」

「ひゃ!?……悠ちゃん?」


 おつまみを選んでいた私の後ろに、いつの間にかかわいい後輩が。


「何してるんです?」

「えと、おつまみを……」


 なんだか問い詰められてる気分で、しどろもどろに答える私。


「…………」


 心なしか、視線が冷たい気も……。




「……先輩、って」

「?」


 ふ、と目があった後輩は


「お酒、飲むんですか?」


 不思議そうな顔をして、そう尋ねてきたのです。

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