短編集 百合

ワルク

01.木野ミナト×大井悠 内緒だよ

 (2019/11/10 タイトル修正)

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 朝の通勤電車。人が多い。憂鬱。

 せっかく綺麗にしたスーツも、朝から整えた髪も、全部台無し。

 そんな生活が、もうすぐ5年。

 慣れた筈の通勤に、いまだに苦労するあたり、馴染めていないのかも。


「先輩、おはようございます。」

「あ、おはよう……悠ちゃん。」


 通勤途中で同じ列車になった後輩と挨拶。


 大井悠。21歳。2つ年下。同じ会社に勤める後輩。

 身長は小さめ。ブラウンのショートボブ。

 大きなくりっとした目と、かわいい顔立ち。


 女の自分から見ても、素直にかわいいと言わざるを得ない。


「……? なんですか?」

「悠ちゃんはかわいいな、って。」

「……ちょっと意味が分かんないです。」


 素直じゃないとこも、可愛くてよろしい。

 

「耳真っ赤。」

「うるさいです。」


 ぷい、と、顔を背けていても、耳の赤さまでは隠せていないのに。

 そんな彼女の頭を撫でながら。


「……ありがとうね。」

「なにがですか?」

「内緒。」

「えぇ……。」


 気が付けば、憂鬱な気持ちもどこかへと行ってしまったのでした。

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