第7話 剣士ライナス

 半年もすると、ゴブリン退治の冒険者のレベルは上がっていた。街ではゴブリンは何とかなっても小鬼王ゴブリンロードはなかなかの手練れだと噂が流れるようになった。いい傾向だ。これで少しはマシな冒険者がやって来るだろう。

 そんなある日、剣士と魔法使い、僧侶という三人組の冒険者がゴブリン退治にやって来た。俺はゴブリンに被害が出る前に冒険者の前に姿を見せた。

「お前だな、ここのゴブリンを率いている小鬼王ゴブリンロードは!」

 俺は今日も木のマスクを被っている。

「そうだ、命が惜しかったら早々に立ち去れ!」

 と、俺が啖呵を切りながら、冒険者を値踏みする。

 剣士はイケメンで使えそうだ。しかし、魔法使いと僧侶はパッとしない。それに全員男だ。全員を仲間にするとむさ苦しいことになりそうだ。

「ふざけるな!行くぞ」

 三人の冒険者が身構える。俺は親指で三回空気を弾く。弾かれた空気は衝撃波となって、三人の冒険者に向かって飛んで行く。

 まず、魔法使いが衝撃波で吹き飛び、次に僧侶が吹き飛んだ。最後、剣士が持っている剣が弾け飛ぶ。剣士を吹き飛ばさななかったのは、脅して仲間に引き入れるためだ。

 剣士は剣を弾き飛ばされ、レベルの違いに腰が抜けたのか、その場にへたり込んだ。イケメンで俺が望んだ程度のヘタレっぷり。いいじゃないか。

「どうする?ここで死ぬか、それとも俺の奴隷になるか?」

 俺はハイトーンボイスで聞くと、超巨大な火の玉を自分の頭上に出現させた。……ハッタリ用だが、別に奴隷になりたくないなら、ぶつけても構わない。

「ど……奴隷になります」

「では、我の忠実なしもべになると誓え!」

「ち、誓います」

 剣士ライナスは立ち上がると、気をつけをして答えた。俺はそれを聞くと、火の玉をゆっくりと小さくしていった。そして、木のマスクを外す。

「よし、貴様は今日からこのミドー・アーキー様のしもべだ!貴様の名は何だ?」

「剣士ライナスです。……えっ?人間?」

「人間だよ。小鬼王ゴブリンロードとして、ここで使えそうな冒険者が来るのを待っていたんだ。剣士ライナス、お前は今日から勇者ライナスと名乗れ!」

「……えっ?あっ、はい。分かりました!」

 剣士ライナス改め、勇者ライナスは敬礼をして俺に返事を返す。うんうん、なかなか使えそうだ。

「失礼ですが、お聞きしてよろしいでしょうか?」

 ライナスは敬礼したまま、俺に質問をぶつけて来た。

「何だ?」

「私と一緒だった二人は奴隷としなくてよろしいのでしょうか?」

「いらん!まず、男ばっかりでむさ苦しい。それに、もう少しマシな冒険者が欲しい。俺と同等は無理だろうが、少しは自力で戦える程度の冒険者が」

「了解です」

「では、ライナス。まずはそこらへんに生えている木からマスクを作れ!まだ、しばらくは雑魚を相手にしなければならない。顔が割れては後々面倒だからな」

「了解しました」

 ライナスは早速、手頃な木と俺に吹き飛ばされた自分の剣を探しに行った。

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ウソつきゲス野郎の俺、ソプラノハゲヒゲ太郎。異世界転生のループから抜け出せない。 今井雄大 @indoorphoenix

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