茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず
石田 リンネ/ビーズログ文庫
序章
しかし、大陸内の
この四つの国のうち、白虎を守護神獣としたのが『
白虎神獣の加護を受けた白楼国の初代
月長城はその名の通り、月の光のような白色光を放つ美しき城だ。
城の大きな南門から中央部分までは
後宮には、妃たちやその
後宮で働く女官の一人、
しかし、後宮の女官は、皇帝の寵愛を受ける可能性がないわけではない。
皇帝の世継ぎが生まれていないときに
──つまり、茉莉花は結婚の機会を
「春になったのね」
まだ寒さが残る春の初め、後宮内に梅の花が咲いた。
茉莉花が思わずうっとりと
「わたしは男の人と一生結婚することはないでしょうけれど、女官になれただけで
元々、茉莉花は宮女として後宮入りした。宮女とは、
それでも、給料が保証されて
運よく宮女になれた茉莉花は、宮女の自分に満足していたのだが、とある事件で
その日から下働き生活が一転し、
今の状況は、運よくを通りすぎて
「男の人にとって、
これ以上を望むのは
「
「相変わらず素敵な方よねぇ……」
わっという
人だかりから離れたところにいた茉莉花は、梅の花の
十八歳の若き皇帝『
大陸の東側に位置する国にとっては珍しい
「……陛下のお姿を
珀陽は、
美しい顔にはいつも
「
白楼国の皇帝は、後宮に多くの妃をもつため、
かつて多くの皇子の一人で、しかし力のある
その直後のことだ。珀陽の父である当時の皇帝が、あまりにも突然に
珀陽の
民は皆、科挙試験と武科挙試験の両方に合格していた新皇帝『珀陽』の誕生を喜んだ。
皇帝になってからの珀陽もまた、周囲の期待に
「ああ、一度でいいから陛下に話しかけられたいわぁ……」
「わかるわかる。やっぱり夢を見るわよね、でも現実は厳しい~!」
女官たちの
主役は女官になったばかりの少女だ。彼女は後宮に渡った皇帝と、あるときふいに眼が合う。近寄ってきた皇帝に名を
それから気にかけてもらえるようになり、やがて互いに愛情を
少女が意を決して
こんなこと、物語の中だけの話だと、女官たちもわかっている。
でも自分なら物語の主役になれるかもしれないと、どうしても夢を見てしまう。
(わたしは、夢以上のものを手に入れたあと。後宮物語の主役になる必要はない。このまま名もなき女官役として、何事もなく暮らせたらそれで……)
そのために今日もがんばろうと気合を入れたとき、
皇帝とすれ違わないように遠回りしてきたらしく、庭の中を早足で歩いていた。
「茉莉花、女官長さまがお呼びよ。急いで」
それは大変と茉莉花は小走りで女官長の部屋に向かう。
はしたないと
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