コユメちゃん日記

梦現慧琉

0. ご挨拶

 ――男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。


 この書き出し、最高。

 日本人なら誰でも知ってるだろうから言うまでもないけど、紀貫之きのつらゆきの『土佐日記』ですよ。早速、ドコが最高なのかを幾つか語ろうと思うんだ。

 現代語に手抜きで訳すと「男がしている日記というものを、女の私もしてみようと思ったから、する」という感じ。そう。「してみようと思うから→する」という見事な行動力。簡潔すぎる論旨展開。遮るものは何もない。結局やっちゃうのに、わざわざ「してみむとて」と挟むところに、いっとう痺れちゃうね。

 ここで改めて感じ入るわけですよ。何か行動を起こす前には、まず「してみよう」って思わないとダメだよねって。

 気が付いたらことが為せているなんて、めったにないよねって。


 で、しかも紀貫之って男だったんだってさ。当時の男性が文章を書くときは、漢字で書かないといけなかったから、仮名で書いてみちゃうために気を利かせてこういう書き出しにした――のではないか、って話。

 現代で例えたらネカマじゃん?

 なんてツッコミは既にたくさんされてるだろうけれど。何百年もあとに、ネカマだって事実まで込みで作品掘り起こされる気分って、どんなだろう。墓を掘り起こして訊いてみたい。お墓の場所は知らないけれど、私は性格が悪いので、そういうところばかりに気が及ぶ。


 いかんせん、この書き出しがあまりにも秀逸すぎて、そのあと何が書かれていたかなんて忘れられがちの『土佐日記』だよ。私だけかね? そうかもしれない。少なくとも私は、最後まで読んだ覚えすらないわ。


 さてと、そろそろ自己紹介。

 前振りが長いっての。

 私はコユメ。他の誰かがやっているかはわからないけれど、つらつらとしがらみなく文章を綴ってみたくなったから、やろうと思って、やってみる。ヤマもなければオチもないし、きっと意味も大してないけれど。

「よろしく」のひとつくらいは言っておこうかな。


 つれづれ書くんだったら、吉田兼好よしだけんこうの『徒然草』を引用すればよかったんじゃないの……と、ここに至って思うけれど。

 それはそれ。済んだこと。何はともあれ、ケセラセラ。

 うん。よろしくね。

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