愛される少女

ゆうやみ

第1話 無意味

それは無意味である。

その少女にとって、存在する全て、起こりうる全ては無意味であった。たとえ幾人もの羨望の眼差しと憧れと信仰を手に入れたところで、少女にとって玉座はただの椅子でしかなかった。少女はこの国の女王である。

この国では王は国民たちの投票によって選ばれる。しかし誰もがその候補になれる訳ではなく生まれついて王の素質があるものだけが玉座に座ることを許されその中でたった1人、頂点のみがそれを現実にすることが出来る。そして、玉座に安置する少女は約100人の候補より選ばれた女王であり今までの王たちの中で最も優れた政治をしていた。国民のために、この国のために。外交も良好で民たちからも崇拝され慕われ愛されていた。何一つ淀みのない素晴らしい女王になった。


しかし、その全ては彼女にとって無意味であった。


その理由は、少女に唯一かけていたもののせいである。それは「感情」であった。

少女は悲しむことがない。涙を流すことも咽び泣くことも無い、何故なら悲しみということがわからないから

少女は怒ることがない。怒りに震えることも声を荒らげることも無い、何故なら怒りがわからないから

少女は喜ぶことがない。歓喜に打ち震えることも笑顔を見せることも無い、何故なら嬉しいという気持ちがわからないから。

感情のない少女にとって、起こりうる全てのことは極端に言うならどうでもいいことで格別興味を持つこともなかった。

だが、彼女は愛されている。

国民から

国から

敵国から

自然から

幸福から

この世の全てから、少女は愛されていた。


全てから愛される


皆から愛されることで王になれるこの国ではそれだけで十分だった。

だが少女は無表情で今日も玉座に座る。


そこでふと思い出すのだ、自分の隣にしたはずの存在に

あぁ、そう言えばあの子はどこに行ったのかしら

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