第35話 パーアニーホテルの初雪。

待ち遠しかった土曜日が来た。

朝からカール巻いて

バタバタ、バタバタ父と母親は

会社に出て行った。


母親は副社長が用事で居ないから

代理を務めないと行けないと

7時には居なくなった。


「ママ、ごめんなさい。」

と心で謝りながら母親の出勤には

豪勢な弁当を作ってあげた。


この時は、慶一道が陽和の

誕生日の為に、

会社を休んだのだと・・・陽和は、

思い込んでいた。


バタバタと、出かけたはずのママが

バアアアンと、ドアをあけて

「誕生日、23日陽菜と同じ日で

いいの よ ね、」

と確認して来た。


「うん。いいよ、」


「月曜日だけどいいのよね、」

もう一回確認してきた。


「いいよ、陽菜は休みとったみた

いだ けど 私は5時には帰れるし、

佳代さん 、も穂花も呼んでる

からね。」



「了解、了解」

ママはまたドタバタドタバタと

車庫へと走って行った。」


「パーアニーホテルか、

何処にあるんだろ?

ま、タクシー呼ぶからいいか‼」


陽和は問題のホテルと知らず

ノコノコと出かけて行った。

こんなにワクワクドキドキ

久しぶりのトキメキだった。


「ヤバい、慶一道の事好きかも。」

そんな想いが溢れていた。


御化粧もいっもより可愛く念入りに

彼の為に買ったドレスも似合ってる

と思う。

おかま店長さんにありがとう。と

言いたい。

休みの日だから早めに出た、

車は混雑

していたが指定された11:00には

余裕で

着いた。


ロビーで彼を待つていると、

武蔵野蒼太が・•・現れた。


一瞬、


「おーピッタリ!時間どおりだな、」


武蔵野蒼太の姿を見つけた陽和に、

蒼太はニヤニヤしながら近ずいて

来た。

〃ふ〜ん〃上から下まで舐めるように観察してくる。


「慶一道に頼まれたんだよ。

一日エスコートしてくれってね、

せっかく可愛くして来たのにね‼

慶一道も残酷な事するよな‼

昔から裏切り者にはこっ酷く

やりかえしていたもんな〜」



陽和はポカーンとしていたが、

蒼太に聞いた。


「え?彼は、慶一道は来ないの?

彼と約束があるのよ。」


「いやいや彼は昨日からきてるよ、

ジオンと朝からアツアツで

大変なん だ よ!」


「アツアツ・・・?なんで!

?どう言う事?」


「昨日、ジオンを空港迄迎えに行ってそのままホテルに入ったんだよね。

朝9時に2人で起きて来たしね。

すっかり、恋人気取りだったよ

羨ましいね。」



「うそ、だ、よね。」


不安丸出しの陽和の顔を眺め

ニヤニヤしながら蒼太は言った。


「いやいやいや、嘘ついて

何になるの?

昨日の話じゃさー

ジオンも、交渉に来た慶一道に一目

惚れ したみたいでさ、どうなるのか

ね〜両想いじゃね。」


「おっと‼もうセレモニーが始まって るよ 行こうか、連れてかないと慶一 道に叱ら れるし、キミも自分で二

人の事、確かめた 方が安心だ

ろ?」


そう言うと、「行こうか?」

と陽和を誘導するように歩きだした。


陽和も、半信半疑、

何かのサプライズと疑い、

そう思いながら歩いた。

だって、慶一道は陽和が一番だって

言ってたじゃない。

ジオンとそんな事ありえない。


会場に入ると現社長の話が終わり、

ホテルを設計し運営していく

友樹の姿が壇上に、あった。


「今日はサプライズゲストを

呼んでいま す。カメラマンさん達、

遠慮なく撮影下さ い。」


ライトが、バンと音を立て目の

眩むような光がグルグル回った後

入口を照らした。


後部の分厚い扉が開き、

黒服にワインカラ ーのネクタイをしたイケメンな慶一道と

マリリ〇・モ〇ーロを思わせるよう

なシルバーのセクシーなドレスを、

身にまとい・・・リ、ジオンが現れた。


会場はたくさんの拍手と、

動揺が広がり、ザワザワと騒ぎ出す

若い人達もいた。


ピューピューと口笛も飛び出し二人を大歓迎していた。


二人は真っ直ぐ陽和の方へ向かって

来る。

陽和の顔は段々とこわばり


陽和が呆然としていると慶一道は

陽和を見向きもしないで、ゴン

陽和の肩に慶一道の腕があたった。

でも何もいわず、表情も変えない。

陽和は、よろけながらも二人をじっと見送った。

慶一道が当たった腕が微かに痛む。


リ、ジオンの指はしっかりと

慶一道に握られて壇上へと進んで

行った。


赤とオレンジのライトを浴びて

2人は最後まで寄り添っていた。

壇上の階段を上がり終えた2人は

熱烈に抱き合い、キスをした。


司会者は

「オーキッドの春の新色

キスしても落ちない色

春色、スト ロベリ ーのキス。」


と宣伝感をだしていた。

あくまでも宣伝と

言いたかったみたいだが2人のキスは

角度を変え、つづいていた。


アンコールの拍手の中、慶一道は

陽和を見つめてニヤリと笑い、

またジオンに軽いリップキスを

していた。


直ぐに熱愛報道がテレビや、

雑誌にながれていた。

その時、陽和の周りの音や、

景色が消えて・・・


ただ1本陽和の前に道が見えていた。


陽和は放心状態になり、とぼとぼと

歩きだした。そして、いつの間にか

ホテルのロビーに腰かけていた。


「何で、こんな裏切る事する?

あの時私は諦めていたのに・・・


放っていてくれたら・・・

良かったのに・・・

こんなに寂しいのは・・・なんでか

な?」


陽和は考えていた、誕生日を

お祝いしてもらえると喜んだのに。

とんだシッペ返し・・・だ。


ホテルからの1枚硝子に、

陽和が映し出されていた。

日本庭園を広くとった庭に粉雪が、

チラホラと降ってきた。


綺麗、暫くするとフワフワとした

牡丹雪に変わり、日本庭園を余計

貫禄ある風景に見せている。


韓国では初雪にお願い事を

するって聞いた。

陽和は窓の外を見ながら、


願いをかけた。


小さく手を合せ、しずかに目を

つむっ た。


何時までそうしていたのだろう。

陽和は立つてホテルを出た。

しんしんと降る雪に身を任せて

歩きたかった。

何だか、寂しくて寂しくて

どうなっても良いと思う。


残酷な失恋。



慶一道はザマー、俺を騙した

罰だと胸のすく思いがした。

俺が惚れている事を手玉に取って、

友達を裏切らそうとするなんて、

いいザマだ。反省しろ‼



昨日、俺もやけになり、

ジオンとひとつのベッドで夜を

明かした。


お試し期間に入ってずっと

ご無沙汰だったから、熱い夜を

ジオンと過ごした。

言い訳はしない。


ジオンは遊びだからと言った。

勿論俺も同じ。以前の俺なら

何ともない遊びだ、しょつ中

やっていた事、大した事はない。

軽いノリだった。


しかし胸に残るのは罪悪感。

重圧感に押し潰されそうになる。

しかし、俺を騙した陽和に

目にもの見せてやりたいその想いが

背中を押した。


可愛さ余って憎さ百倍


「慶一道、好きな子がいるのね、」

ジオンはバスローブを着ながら

聞いてきた。


「なんでだい。」


「気持ちがこもって無かったわ。

それに、寂しそうだし。」


「そんなことはないよ。」

俺はジオンをだきしめ、

キスをした。


朝を迎えたベットの中でジオンに

言われた。

ジオンも好きな男がいて

当てつけに俺と寝たらしい。

俺とジオンは似たもの同士かも

しれない。



ジオンは同窓会には出れず

夕方の便で帰って行った。

俺も部長に代理を頼んでいたから

少し同窓会に顔を出して会社へと

帰った。

すると部長がホッとした顔をして・・・


「あ〜よかった、早かったですね、

申し訳ありませんが今日これで帰っ

てもいいでしょうか?」


いつも毅然としている部長が

ソワ ソワしながら聞いてきた。


「ああ、構いませんよ。

でもどうしたんです?部長が

早く帰るなんて珍しい。」



「娘が風邪ひいたみたいで熱が

高いらしいん です。

なんかお友達のパーティに行って

パーティドレスに何も着ないまま、

帰った みたいで・•・」


「え、なんのパーティー?」


「あの子誕生日なんですよ

陽菜の話 だと 彼の為にドレス迄

奮発して、でも彼氏と喧嘩したみた

いで・・・

彼氏居 ないって 言ってたのに、

いたみたい で・・・」



「部長、今は居ないって言っても

無理な話、居るよー

部長の娘なら美人じや な い?

でも俺は手出さないよ。

流石に部長の娘さんにはね。」


「そうおぬやがいしますよ‼️

そうそう陽和にはスッカリ騙されまし

た。」


「ハハハ・・・・・え・陽和?」


「誕生日ケーキでも買って帰ら

ないと 食べれるかなぁ?

病院に務めてる癖に風邪なんて

武蔵野先生に笑われるわ。じゃあ」


「武蔵野病院?陽和?」



「待つて、部長、その

娘さんの写真、見せて‼」


「いいですよ。でも可愛いから

ビックリしないでくださいよ。

右手が陽和で左が陽菜ですよ。

陽菜と誕生日近いから23日に

一緒にお祝いしてやるつもりなん

ですけど ね。」



「え、23日は妹さんの誕生日?」



「そうなんですよ。

どうせなら同じ日なら良かったんで

すけど ね 、上手くいかないもんで

す。


まーったく、誕生日に寝込むなん

て、 プリンもいるかなぁ!

あ、もういいですか?じゃあ、」


あ💦

ガクッ!

大仏部長の携帯の待ち受けには

2匹の犬と陽和と妹が写っていた。

それは俺の家で生まれた

ダックスフンド。

そう言えば大仏なんて、余りある

苗字じゃない。

なぜ気づかなかったんだ・・・


〃〃今日、誕生日だって?

陽和は嘘ついてなか・・・った?〃〃


あのまま薄着のままホテルを

でたのか?

あ、あ、雪降ってたのに、

確か業者が言っていた、

積もりだしたと。


慌てて慶一道は蒼太へ電話をかけた。

それはもう、怒りの塊の様な声だった。


「おい、💥💢💥陽和の・・・誕生日は

嘘じゃなかったぞ‼なんであんな嘘

ついた ‼

お前のせいで陽和の心に傷を付けて

しまった・・・、

最悪の誕生日を迎えたんだぞ💥💢💥

取り返しがつかない!

どおしてくれる、💥💢💥お前との

友情も

これまでだ‼💢」


「待て‼騙されるな!、俺をしんじ

ろ、慶一道、」


💢

俺は陽和を裏切っ・・・ジオンと・・・


一夜を、過ごした・・・

💥💢💥

何故だよー!


ガチャーン

慶一道の余りの怒りに驚いた蒼太は

確認の為に鷹斗に電話した。


「おい、鷹斗、陽和の誕生日は23日

なんだよな、慶一道が怒り半端ない

んだ嫁さんに確かめてくれ‼」




「頼む鷹斗、頼むよ。」



鷹斗は悩んだが切羽詰まった蒼太の

声に渋々従った。


「あ﹏のぉ、佳代、誕生日行くって

言ってたよ な!いっだっけ?」


「何でそんな事気にするの?

なんか企んでんの、まさか又合コ

ン??


「送ら・・・ないとだめだろ、危ないし

迎えにも行きたいしさ。」


「陽和の誕生日は今日だけど妹の陽菜 ちゃんとまとめてお祝いするんだ

よ、毎年私らだけ何だけど、今年は

皆都合ついたか らって、

お呼ばれしたんだ よ。」


「エッ、じゃあ陽和ちゃんの誕生日今日って事?」


「そそ」


、「そそ」って・・・( ; 0ᾥ0 )




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