理系のひと

私の母は理系の人だった

あの時代で必死に勉強して国立大学の生物学科に進み

生物や化学の研究をしていた

根っからの理系の人だった

幼い頃から父のお下がりのワープロの前でひたすらに文章を、

物語を打ち込んで空想に浸っている私を

見たこともない新種の生き物のように見ているひとだった

私の趣味や嗜好に関してあまりよく思っていなかった母親だったが、

文章を書くという私の特質だけは認めてくれていた

すらすらと言葉を、物語を紡げることがどれだけ珍しく

そしてそれが希少な素質だと教えてくれたのは

紛れもなく母だった

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