「初虹」

 通り過ぎるようにさっと降った春時雨。冬のどこか重い雨とは違い、本当に軽かった。

 ちょうど散歩中に降ってきてしまったため、東屋で彼女と一緒に休んでいると。


「む、家畜よ。貴様に面白いものを見せてやろう」


 悪戯気に彼女が笑い、私の額に手をかざした。

 なんとなく閉じた目を再び開けると。


「わぁ……」


 虹がアーチを描き、その上を輝く小魚と共に泳ぐ白い鯨がいた。


「六つ目をあけたのよ、面白かろう?」


 自然と首が縦に動いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る