「晩酌」

 ふと、縁側とを区切る襖を開き。のんびりと新茶を飲んでいた。春の夜、しかも月のない今日のような日は。

 何処か春に潤んだ闇のあちらこちらに確かな春の息吹が感じられて、ちょっとした贅沢をしている気分になる。

 ほぅ、吐息をつけばちょうど居間を通りかかった彼女が。


「……春の闇で飲む酒もオツなものがあるか?」


 と呟きながら。自室から陶器でできた酒瓶とお猪口をひっさげてやってきて。私の隣に座って晩酌を始めた。親父か。

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