あつい日にはじまったあれらのコト
来条 恵夢
奈良山飛鳥
ぜろ
朝、
飛鳥にとって予定の入っていない夏休み初日は惰眠をむさぼるに決まっていて、どうせ親もいないのだから、暑さに叩き起こされるまで布団にしがみついているつもりだった。
それを打ち破ったのは甲高い必死の声で、はじめはそれが何なのかすらわからなかった。
ホラー映画を大音量で流しているのかと思い、頭から布団を
それが家の中、どうも階下から聞こえると気付くまでに更に一分前後。
妹の声と疑うまでに数十秒。
何事かと階段を下りるまでに合計で数分がかかったというのに、悲鳴は途切れながらもずっと続いていた。
中学二年生で、外面はいいが身内、とりわけ飛鳥には容赦のない妹でもある。
しかし基本的には物静かで、天敵のゴキブリを発見したときにも一声上げて逃げ出すくらいで、ハリウッド映画張りの悲鳴は、飛鳥が知る限り聞いた覚えがない。
ただ事ではないと、さすがに眠気も吹き飛んで駆け下りた飛鳥はそこで、見えない何かから一身に逃れようとする少女の姿を発見した。
作りかけていた朝食らしい卵が飛び散り、フライパンもひっくり返っている。ガスコンロの火もついたままで、消さないと、と思ったことも覚えている。
「京…?」
伸ばした手が少女の肩に触れた瞬間に、殴られたような衝撃があった。
ひとつが、視界が赤く染まり、己の体が、逃れようなく炎に包まれ、焼かれている感覚。もうひとつが、あまりにくっきりと澄み渡った思考の中に浮かぶ、言葉――言葉と呼べばいいのか、あるいは情報の塊とでも言えばいいのか。とにかく、天啓めいた、確固たる厳然たる事実。
後者のおかげで、飛鳥は炎を押しのけられた。
「それ」は、鮮明な熱と痛みが幻覚であり、引き起こしているのは京だと
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