第36話 その三十六

 総一は吹き飛ばされて、壁に打ちつけられた。

 ジークが駆け寄ってくる。

「とまるんだ!」

 まっすぐ鬼を見る。

 一瞬動きが止まる。

 ジークが近づこうとすると、鬼は苦しそうにしながら絶叫した。

 ジークの腕を掴むや、振り回して地面に叩きつけた。

 腕の骨が折れて、あらぬ方向へ曲がっていた。

 それでも立ったジークはとまるんだと言い続ける。

「もう一人じゃない、僕がいる、みんながついてる。寂しくなんかないんだよ。もう寂しい思いなんかさせない。僕が守るから」

 鬼は涙を流しながら動きを止めた。

 ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら。

 綾子は元の姿に戻っていた。

 ジークは大丈夫だよと言って抱きしめようとしたが、腕が動かせないのに氣づいた。

 総一は

「なんでお兄ちゃんでとまらないんだよお」

 と血だらけになりながら一人独語した。


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