第19話 その十九

 虫たちが冬眠から目覚める啓蟄の頃を幾日かすぎた頃。

「養父(おとうさん)、僕は敵を倒しにいこうと思います。このままではみんなに迷惑がかかる。今までありがとうございました」

総一は深々と頭を下げた。

 最近立て続けに襲撃されたので総一はついに決心したのである。

「一人で行く氣なのか」

「はい」

「私も行くに決まってるじゃない」

「だめだよ、マリアを危険な場所に連れて行きたくない」

「絶対行くわ。あなたが私を守ればいい話でしょ」

 こうなってしまったらマリアは人の話を一切聞かない。

 総一は困った表情になる。

「そうだな俺とジュリアも行こうか」

「え」

総一は驚いた。

「マリアを危険にさらすわけにはいかないからな」

豪は歯を見せながら言う。

「僕も行こう、マリアにもしものことがあったら嫌だからね」

 ジークが言った。

 みんなマリアが好きだったのだ。

みんなで行くことになった。







 瑞(みず)穂(ほ)の国は荒れていた。人々は餓え、税の取り立てに苦しんでいる。

 痩せこけている。大人も子供も。

 そこらで野垂れ死にする人がいて腐敗臭がただよっていたり、埋葬されずただ集められている死体も獣に荒らされるがまま、町に行くと下水の処理がされておらず、めちゃくちゃな有様だった。

争いや強姦、人さらい、物盗りが横行しているようだ。

 見るに堪えなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る