第14話 その十四

 僕は健忘症になってしまったらしい。

 ここにいる人たちのことを思い出せない。

 申し訳ない氣持ちになってしまう。

 思い出せるのは、城の人たちだけ。もうその人たちは死んでしまったと聞かされて、とても悲しかった。

僕は毎日稽古をしていたらしい、体を動かさないと変な感じになる。だから記憶を失った今でも休まずやっている。体が勝手に動いてくれていた。不思議だった。

 ジークとマリアが話しているのを見ると、なぜだか嫌な氣持ちになった。この氣持ちは何なんだろう。

「二人、話すのやめてもらっていいかな。嫌な氣分になるんだ」

 ジークは苦笑いしながら嫌だと言い、マリアは優しく僕に微笑みかけてくれた。

 エヴァの料理が美味しかったから、エヴァみたいな料理上手なお嫁さんが欲しいと言ったらマリアはその日ふてくされていた。



 なぜだろう。










 ふと目を覚ました。

 月明かりに照らされた、美しい女の人が僕を見ていた。

 びっくりして体が震えた。

「な、なに」

「寝顔見てただけ」

 なぜだか胸が高鳴っていた。

 なんでだ。

「そんなに見られたら寝れないよ」

大きな目の中の、青がふちどるあざやかな黄色い綺麗な瞳。

 微笑みながら彼女はいい匂いを残して部屋を出て行った。


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