第126話 放課後の良さと、短さ

「なんで秋の虫って音おっきいのかな」


「説明いります?」


「あ、いい。ただ『うるさいなあ』ってだけだから。キミの解説はいらないかな」


「まあ、でも秋は良いですよね。暑くもない寒くもない、所謂涼しい? 湿度も適切だし、一番快適だなあって時期です」


「あと夕暮れがいいよね。日中あっかいけど、ちょっと寒くなってく時に見る夕焼け景色よくない?」


「わかります。やっぱセンパイと俺との認識の解釈って似てますよね」


「似た者同士だしね」


「……」


「なんで嫌そうな顔するの」


「俺とセンパイ、共通点ないのに。ていうか一緒にしないで」


「酷くない? 一緒にしないって、いやいくらなんでも傷ついちゃうよ?」


「俺、変人扱いだけどまともだし。センパイ、まともそうで変人だし」


「傷ついたし、キミの事傷つけていいよね?」


「んー、むしろなんで同じだと思ったんす?」


「逆に聞きたい。同じじゃないのなんでよ」


「俺、寂しがりなんだなあって最近思って。色々言われてますけど、誰かと接してないと寂しいなあって思うことがあって。でもセンパイは周りと馴染んでますが独りのほうがいい、みたいなところありません?」


「そっか。やっぱ似た者同士だ。まったく同じじゃないけど、似てるって意味で」


「ちょっ、いきなり抱き着かないでください! 最近そういうの減ったと思ったのに」


「寂しいって気持ち、どう紛らわしたらいいかってね。よくわかんないけど、でもキミに触れてると安心する」


「……俺も、こうされるの嫌いではないし、その、うん。むしろ――」


「好きになっちゃう?」


「いきなり抱き着かない。離れてください」


「口だけかな? 体は正直だぞ?」


「元から好きです。でも、だから離れてください」


「んっ。キミの頬ってやっぱり柔らかい」


「だからっ。そういうの、ほんと、やめてください」


「本気になっちゃう?」


「なるって言ったらどうするんすか」


「そうねえ……。なんかよくわからない寂しさ、慰めて?」


「……、本気じゃないっす。けどセンパイのその寂しさをどうかできるなら、何かできたらなあって」


「じゃあさ、いつもの喫茶店に行こ? あと週末一緒にお出かけしよ?」


「映画館は嫌っすよ」


「ならキミの家で映画鑑賞とスマブラだね」


「ん-? 夏休みと変わらない?」


「そうだね。ああー、うん、そうかも。そっか、ずっと一緒に居たもんね。だからか」


「よくわからないっすけど、月曜日にいきなり週末の予定ぶち込んでくる馬鹿はセンパイ以外に……一人ぐらい心辺りあるんすけど、まあ先着なんで。映画、何見ます?」



「オススメとかある?」


「ええー……、提案した人がそれ言うんす? ペンギンハイウェイとか良いっすよ」


「あっ、それ気になってた! それにしよ!」


「うっす。んじゃそろそろ学校出ます? 日が暮れてきました」


「だね。ほんと、この時期ってすぐ日が落ちる」

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