第115話 幸せに形はないから

 私は正直、恋愛作品があまり好きではない。

 人並みに恋愛映画だったりドラマだったり、最近は颯君の勧めでアニメや小説も目にするようになった。

 

 面白いか面白くないか、と聞かれれば嘘偽りなく面白かったという感想を持つ。

 登場人物が恋をして、愛を語り合ったりとかして、劇的で少し羨ましいとも思う。


 けれど、もし「その登場人物が私なら」と考えるとぞっとする。

 悲劇的でも喜劇的でも、「私の恋を客観的に見られ、面白がられる」なんて耐えられない。

 

 私は男嫌いだ。

 今でもそうだと言い張れる。

 例外が2人、パパと……ごめんねパパ。パパよりも好きな人できちゃった。

 そんなずっと恋とか愛とか無縁のままだと思い込んでいた私が、やっと出会えた恋に「劇的な要素」なんていらない。


 生きるという事はそれだけで色々あるし、楽しい事もあれば嫌な事もある。

 1人ではどうしようもない事もあるし、その時は誰かに助けてもらって、それでもどうしようもない事には挫けて、そうやって人は生きていくんだと思う。


 そう、別に他人から私の人生をどう見られても「ありきたりな」「普通の」「どこにでもある」ものであっても、辛い事とか、諦める事しかできない事もたくさんあったし、これからももっともっとあるはずだ。


 だから、その「ただの女の子」の、やっと見つけた恋に障害なんていらない。

 つまらなくていい。

 一緒に居て、笑って、時々喧嘩……あれ、実はあの子と喧嘩らしいことしたことないけど、まあいずれきっとある、はず。

 そういう当たり前の恋に、映画やドラマになるような面白可笑しいか、険しく泣けるような要素はいらない。


 私の恋をわざわざ創作物にするような物好きがいたなら、指を指して笑ってやろうと思う。

 ごめんね、何も面白くも無い、ただ普通の……ちょっとだけ面倒くさい恋だよ。

 

 でも、それが私の恋。

 私だけの恋。

 いつだってハッピーエンドしかない、けど山も谷もない、平坦な道のりだ。


 幸せに形は無いし、形にできるようなほど私の恋は安くない。

 誰にも面白いと思われないし、でも私達はは絶対に幸せになれる、最高のお話。

 



「フィクションならいいんすけど、恋愛映画って現実に起こったら結構クソっすよね」


「ええー……、キミがそれ言うの? フィクション恋愛脳のキミが?」


「だって、例えばお涙頂戴系で、不治の病に冒されて『助けてください』とかするの、現実だったら頭ちょっとおかしいし。そもそも好きな人が不治の病って……、好きになっちゃうのはどうしようもないですけど、だからこそ、辛い、としか」


「じゃあさ、もしキミが恋をするなら、どんな恋がしたい?」


「なんとなく『好き』になって、なんとなく『幸せ』になるのがいいっすね」


「難と無く、ね。うん、そっか」


 でも実際は難も無い恋なんてありえなくて。

 自分自身しかわからない、難しい事ばかりで。

 けど、だからこそ、好きになる事が愛おしい。

 ずっとずっと、ずーっと一緒に居たい。

 だから、第三者が喜ぶようなお話ではないの。


 これはいつだって私だけの恋だから。

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