第53話 いつも通りがご褒美
「あの、センパイ。離れてもらえませんか?」
「んー? どうして?」
「普通に鬱陶しい。なんでソファーに座ってるのに、背もたれじゃなくて俺の肩に頭乗せてるの? あと腕組むのうざったい」
「気にしなくていいよ? いつも通り、映画に集中してればいいだけだし」
「集中できないから止めてってお願いしてるんですけど」
「キミの大好きな映画より、私の意地悪のほうが気になるんだ」
「だから言い方! センパイの甘い匂いって、なんか集中力が欠けるんすよね。なんでだろ」
「そのうち慣れるんじゃない? てか慣れておいてよ、これからもずっと続くし」
「……まあ、確かに」
「えっ、納得するんだ?」
「なんとなくなんですけど、きっとこんな事がずっと続いていくんだろうなあと思っいまして。センパイと出会って一年するかどうかですけど、ほぼ毎日一緒ですし。これからも、こんな感じが当たり前になるのかなって。だったら早く慣れて気にならなくなるほうが良いかなと」
「うーん。なんだろ、当たってる様な間違えてる様な。ん? 私、もしかしなくても失敗してるの?」
「多分最初からですよ。からかう相手、遊ぶ相手、隣にいる相手。それが全部俺ってのが間違いです」
「それはない。断言する、それはない。今のところ貰い手がない私の処女を賭けてもいい」
「最近大人しくなったかなって思ってた自虐風下ネタを急に挟まないで!? センパイの、その、……はじめてを賭けられて困ります」
「もし貰ってくれないなら生涯処女のままだけど? 責任取って?」
「なんで俺への罰ゲームみたいになってるんすか。ほんとそういう無駄に俺を貶めようとするの好きですよね」
「うん、好き。普段しかめっ面で何をどうしようと動じない感じなのに、こういう話だとキミ、結構動揺するから」
「チキンハートなんで」
「肌はすべすべしてるし柔らかいけどね。どっちかっていうとチェリーって感じ」
「引っぱたくぞ。なんで下ネタに下ネタを被せるんだよ!!」
「ところでキミのは被って――」
「いい加減にしておけ」
「あいたっ。酷い、チョップは酷くない?」
「ビンタよりマシだと思え、後が残らないからな」
「証拠を残さないようドメスティックなバイオレンスをしたってこと? もしくはそういうのが好き?」
「男嫌いのくせして中途半端に耳年増なの、ほんとなんでなのさ。情報源どこからよ」
「友達。猥談すると、やれ今の彼のがうんにゃら、サドだのマゾだのって感じで」
「こえー。あ、いや男同士でも確かに付き合ってる相手の身体的特徴や性癖で話盛り上がってるな。そういうところは男女共有なのか」
「ところでキミのはどうしたら盛り上が――」
「いい加減にしなさい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます