第25話 ご趣味はなんでしょうか
「そういや、俺ってセンパイの趣味って知らないんすよね」
「ん? キミをからかうこと」
「いやそれは知ってます。そうじゃなくて、俺は映画好きでしょ? そういう感じの」
「うーん。うーん? あれ? ないかも」
「おい華の女子高生」
「男嫌いなのに華があると思うの?」
「えー、前言ってた事と全然違うじゃないっすか」
「まあ、そうね。うーん、本当に何もないかも。キミと一緒にいるだけで、凄く満足してるし」
「センパイって友達います? 俺が言うのもなんすけど、友達居ないと付き合いで広がる趣味とかなくなりますよ?」
「体験談?」
「経験談、しかも現在進行形。センパイか親友しか俺を遊びに誘ってくれないんすよ。だから趣味、とまではいかなくても興味あるものが増えない。よくないっすね」
「別にいいんじゃないの? 今ある好きなものがあれば」
「センパイ。それはダメです。人間、自分の世界が全てになったらダメです」
「急に真面目なトーン!?」
「いろんな映画見てて思うんですよ。人によってはジャンル固定で見る人もいるかもですが、俺の場合オールジャンル面白ければオッケーって。で、思うのが、『なんでこの作品が作れたか』って疑問です。俺は映画以外まあ特に趣味はないけど、そんな俺がこんな発想できるか? ってなったら絶対にならない。人が生きる事、つまり経験が何より大事って」
「もっともらしいけど、だからってキミ、何か行動してる? 欲しい欲しい言ってる彼女は?」
「無理ー。毎日二分ぐらいにがんばってみたけど、ますます無理ー」
「時間的には短いけど倍っちゃあ倍か。ますますってどういうこと?」
「無理なところがますます無理だって認識させられてます。ギャル系も清楚系も大人しい子も、無理。絶対無理」
「わりとキミから『馬鹿なの?』って真剣に言われてたけどさ。キミも十分『バカ』だよ? 女子に興味持てない時点で彼女なんて作れるわけないじゃん?」
「ええ、まあ。薄々というか、もう俺無理じゃないのって思ってきてます」
「てことは、消去法で?」
「別に彼女いらないんじゃないの? 親友の純と、今はセンパイがいてくれれば満足な高校生活送れてるし、そういうの大学に進学して、もっと大人に近づいてからでもいいんじゃないかなって」
「あっれー? おっかしいなあ? ねえ、キミの事を時々男じゃないみたいに言うけど、本当に男? 色々あるじゃん、性欲的なのとかさ」
「最近隙あれば下ネタ挟みますね。性欲満たすために彼女が欲しいとか男以前に人間として終わってんだろ」
「キミのそういう生真面目なところは本当に誇っていいと思うけど、彼女作りたいならちょっと考え直そう?」
「えっ? えろいことしたいから彼女欲しいでーすってするの? それで彼女できるの? 嘘だろ?」
「そうね、言われてみるとおかしいね。けど、大体そんな感じで周りは付き合ってるよ? 性欲目的がメインじゃなくても」
「……、俺の知ってる恋愛じゃない」
「よしわかった。君は映画の、しかも凄い純愛作品しか見てきてないからそんなに拗れたんだね」
「いや映画はフィクションってぐらいわかってますよ。でも現実の人間でも一目惚れとか、なんやかんやで恋にって奴らいくらでもいるでしょ? 俺もそういう経験がしたいっす」
「あー。恋愛経験おおよそ一回しかない私が言っても説得力ないけど、あれ大体思い込み」
「へえ、何かとあれば男嫌いとかいうセンパイもやっぱ恋愛経験あるんすね。いつか事細かに聞いていいです? 俺の聞かれたくない過去話させられた代償に」
「うん、いいよ。その時は、覚悟してね。キミの家に泊まりこんで24時間ぐらいは話せるから」
「こわっ」
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