知らない間に彼女がいることになっていた
狐雨夜眼
第1話 俺とセンパイのいつも通りの放課後
俺が起きるタイミングに、ちょうどラインの連絡があった。
『屋上』
放課後、屋上に来いというセンパイの連絡だ。
『うっす』
人のスケジュールはなんだかんだで早いもの勝ちだ。
俺は先ほどまで誰も放課後遊びに誘われていない。
だから了承する。
その後、気まぐれで誘われても先約を優先する。
俺を誘いたければセンパイより早く連絡するんだな。
そして放課後、屋上で二人ぼけーっとジュースを飲みながら青空を見上げてた
「なあ、センパイは彼氏っていらねーんすか」
「んー? いらないけど?」
はあ、そうですか。
欅颯と橘桜センパイとはどうやら彼氏彼女な関係と見られているらしい。
俺としてはそんな事実一切ないので、センパイからも誤解だといって欲しいけれど、どうにもはぐらかされる。
理由はきっと男避けみたいなもんだろ。
センパイは見た目はクッソ美人だ。
化粧してないのに、なんか着飾ってる勘違い女子よりはるかに美人だ、ちょっと猫目気味なのが凛としている。
そして痛みのない艶やかな黒髪を腰ほどまで伸ばしている。ここまで長いとケアも大変だろう。
頭部だけは清楚系な感じなんだけど、制服は学校指定外の紺色のカーディガンと桃色のブラウスだ。
スカートも結構短い。白い肌の太ももをこれでもかと見せ付けるようなものだ。
何度も言うがセンパイは美人だ。
俺ですらそう思うのだから、周りもそう思っている、はずだ。
だから俺という事実とは異なる架空の彼氏を作っておけば周りも収まりが付くのだろう。
相手が平々凡々の俺でいいのかと言われると困るが、それはセンパイの好みがゲテモノでしたってことで。
だが、センパイの都合がすべてじゃないんだよ。
俺だって俺の都合があるんだよ。
「俺は彼女が欲しいっすね。だから『俺がセンパイと付き合っている』とかいう誤解を解きたいんすけど」
「めんどい。いいじゃん、男子って彼女持ちが偉いみたいなんでしょ? 颯君からすれば儲けものでしょ?」
「いや儲けてないんで、むしろ赤字なんで。彼女持ちの男に告白する女子がいると思いますか? 俺はこの誤解のせいで実は俺のことが好きだった女子から愛想付かされてるんでしょ?」
「ふふ、おもしろーい。誤解が解けてフリーになったら、誰かに告白されると思ってるの? むしろ状況証拠もない噂レベルの今の時期に誰にも告白されてない時点で万が一すらないよ。諦めよ?」
「じゃあセンパイは俺が『桜は俺の彼女だ』っていい振らしてダメージないんすか。俺なんかが――」
「私、それ嫌いなのよね。『うんちゃらなんかが~』っての。どんだけ自信ないの? てか別にいいって言ってる方の気持ち考えてなさすぎでしょ」
「すんまんせん。じゃあセンパイって俺が彼氏でもいいってことっすか?」
「んー、どうだろ」
またはぐらかす。
「じゃあさ、私が良いって言ったら私と付き合うの? あんだけ誤解解いてくれっていったのに? そこに自分の意思はあるの?」
「あー、いやそれは確かに考えてなかったすわ」
「さっきも言ったけど、高校生にもなるとやれ『彼氏ができました』って自慢したがるでしょ。でもさ、大体が好きな人と一緒になったとかじゃなくて、告白されてなんか雰囲気でってのばっかでさ。私そういうの羨ましくもなんともないんだよね。あ、それで付き合って幸せそうにしてる人を否定するつもりないけど」
「まあセンパイは理想高くていいんじゃねえっすか。美人だし、好きになった奴にアプローチかけていくの全然ありっすよ」
「キミはわかってないな。私が美人って言ってくれるのは嬉しいけど。まあ無関心な相手を告白って手段で無理やり好きだと錯覚させるの嫌なの、わかる?」
「わからんす。彼女いたことも彼女作るために努力したこともねーっすから」
「おこちゃまなキミだからこそ、はっきりと言うね。好きになった相手だからこそ、相手から告白させるようにするまでが本気だと私は思うのよ」
「はあ。んじゃあ余計に俺との誤解関係解かないと『彼氏いるのに?』みたいになるっすよ」
「ん? ああ、全然問題ないから安心してよ」
センパイの発言が矛盾の塊でもう正直どうでもよかった
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