部屋に蜂がいる!
瀬岩ノワラ
第1話
昔っから、私は蜂が苦手だ。
というより虫全般が駄目だ。
幼少期、きっと無邪気の至りだったのだろう、興味本位でつついた黒い虫に飛びかかられたことがあり、私は虫が嫌いだった。
事件以降、虫に遭遇しそうな場所は避ける癖がついていたが、現実というのはままならないもので偶発的な虫との遭遇は今現在でもよくある。
だけど、窓を開けた途端に蜂が飛び込んできたのは流石に理不尽だと思った。
後ろを振り返れば黄と黒の模様を見せつけるように蜂が自室のドアに張り付いている。よりによって出入口にいるせいで部屋から逃げる事すらできない。
実に2時間あまり膠着状態は続いていた。
蜂に早くご退場いただきたくて窓はずっと全開。
早く出ていけ、出ていくんだと祈るしかない私に、無情にも蜂からの返答は神経を震えさせるような耳をつんざく羽音のみ。
あれは喧嘩を売ってるのだろうか?
私は絶対買わないが。
ふと思い立って持っていたスマホで検索をかけてみる。
蜂を追い出す方法はすぐにヒットした。窓を開放して暗くしていれば、外からの紫外線に反応して出ていくらしい。
早速実践ということで蜂を刺激しないよう慎重に部屋の灯りをすべて消す。あとは待つだけだ。
効果は早く訪れた。蜂が突然、音を立てて部屋中を飛び回り始める。やったかと思うと同時に戦慄もする。蜂がこっちに来るんじゃないかと心臓がバクバクする。
散々、耳障りな音を立てながら飛び回った蜂は、窓の方に向かい、
――その手前の天井に張り付いた。
「……っ」
違う、そうじゃないと言いかけたがこれはチャンス。玄関まで行けば殺虫スプレーがあったはずだ。扉を塞がれていない今なら取りに行ける。
私は部屋を飛び出してリビングにいるだろう母に向けて叫んだ。
「ねえ、お母ちゃーん! 玄関に殺虫剤あると思うんやけど、取ってくれん?」
「殺虫剤すっからかんやー。どないかしたん?」
畜生
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