第5話 2020年8月 川崎 チセの願い

 ミアキちゃんはお歌が上手やったけど(「私のはお祖母ちゃんの隔世遺伝だよ」といい出したけど学校で聞いたか本で読んだかした事を都合よく言ってるなあとミフユは内心ちょっとイラっとした)、ミフユちゃんは春海に似ちゃったのか。あまり得意じゃなかったけど、お歌の仕事ね認めてもらえたとかちょっと嬉しくてねえ。

 うちもいつ千裕さんが迎えにきてもおかしくないから孫姉妹の歌が聞けるならそれはもう千裕さんに自慢できるから、一度ちゃんと聞かせてちょうだいな。


 それが上京してきた祖母の願いだった。今でも祖父の事を愛しているんだなと思ったミフユは祖母が滞在中の間に歌を聞いてもらえる機会を作れないか摩耶まーやに相談してみようと心に決めた所で車が家の近くまで来た。


「お祖母ちゃん、着いたよ!」と言うミアキ。

 外には両親が笑顔で春海の母親の到着を出迎えていた。

 ミフユはウィンカーを出して家の近くにそっと停めた。微笑むチセ。どうやら今日の運転は合格らしくちょっとうれしかった。

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