第2話 クリームパン

 朝、少し風邪気味で体調が悪く寝坊した私。


 お昼のお弁当はいつも私が自分で作っています。寝坊をしたので、お弁当を作る時間がありません。


 お昼ご飯には学校購買のパン屋さんでパンを買うつもりでした。


 が、しかし。


 満員電車並みにパン屋さんは混み合っています。

 生徒たちが押し合いへしあいの激戦を繰り広げています。

 パン購入戦争に私も身を投じました。





 

 負けました。

 パンは一つも買えませんでした。





 中庭のベンチに一人座る私。

「あ〜あ」

 ため息が漏れます。


 体調がいまいちな上にお腹が減りました。

 ご飯が食べたくないぐらい、いっそ具合が悪かったら良かったのに。


 仕方ない。

 一食ぐらい抜いたって……大丈夫だよ。

 私は諦めて教室に戻ろうかなと思っていました。




「パン買えなかったんだろ? はいっ。分けてあげる」


 うなだれて地面を見つめる私に、救世主が現れました。

 深見くんです!


 涼しげな目元にクールな雰囲気。

 表情が読み取りにくいポーカーフェイス深見くん。


 私の横にストンと腰を落としました。


 人の拳みたいな形のクリームパンを割って私にくれました。


「………っ!」


 うっ上だけ〜!?


 私が深見くんにもらったのはパンの上の部分。


 半分は半分かもしんないけど。


 クリームはくれないんだ。


 あー、深見くんは(彼氏としては)ないわ。



「……ありがと」


 まあ、食べないよりマシか。



 深見くんはもう一つ持っていたパンも半分くれました。


 ちなみにカレーパンの上の部分だけです。

 具はありませんでした。



 優しいけど、ケチだな深見くん。






 

 


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