第39話 幕開け

それから、数日はすぐに経ち学年対抗戦の日を迎えるたった二日、すぐに時間が経ってしまうのもしょうがない。

しかし、この二日間は今までとは比べものにならない、もはや比べることすらナンセンスと言っていい程に良いモノとなった。


今までの学年対抗戦に向け、行われた練習は正直、これやる意味あんのか?と言いたくなるほどで無駄な努力なんて存在しない言うが、それはただの綺麗事だ。


あれで意味があるっていうのなら、それはもうそろそろ世界の終わりである。まあ、異世界だけど。


まあ、兎にも角にも二日間、オレとエヴァの二人でクラスの皆をスパルタで鍛えて鍛えて鍛えまくった。どこまで出来るのかは分からないが、まあ呑み込みも早いようだったし、勝てると信じるとしよう


「おっ、アークじゃねえか」

「ん?」


学園の門前にまで来るとそこには見慣れた顔。オレのクラスの担任でリデスタル学園の学園長、メレナである。いつもより少し早めにここに来ていたので、入っていく生徒は少なく、故に敬語なしで喋り掛ける。


「おはよう、メレナ」

「おうおう、おはようさん。いよいよ対抗戦だけど、どんな調子なんだ?」

「あ、そっか。メレナ、練習風景見たことないのか。まあ、まずまずってとこだ」

「そうか、まあ、お前に関しては心配してはねえけどな」

「そりゃどーも」


まあ、確かにオレも負ける気はない。やるべき事をやり自分の目的を果たす、それだけだ。


ふと、オレは日光の反射で眩しさを感じメレナを見てみると、首にネックレスをつけていた。


しかし、それはカタルト鉱石とは違うようで、勾玉のような形をした中心に赤いクリスタルのはまったアクセサリーであった。


「メレナ、昨日までアクセサリーなんて首につけてたっけ?」

「ああ、これは昨日の夜商店街で買ったんだよ。綺麗だったからな、気合い入れとこうと思ったんだよ」

「気合い入るかどうかは兎も角、確かに綺麗だな」

「だろ?更に俺の美貌が増しちまうぜ」

「ソーデスネ」


片言でそう言った後、メレナと別れ学園内に入っていった。


自身のクラスに入るとそこには、エヴァとミリーゼが既にいて、会話しているようだった。


「おはよう、二人とも。いよいよだ」

「ええ、そうね。絶対勝つわよ」

「目指すは優勝、です!」


二人とも気合いが入っているようで、その目は炎をメラメラと燃やしている。まあ、お二人には心配してない。

いや、でも。

…………ミリーゼついては、後が心配だ。それは精神的な話しだけど。


「あの、アークさん?」

「……あっ、悪い。ボーッとしてた。兎に角、今日は頑張ろう!」


二人は共に頷いた。




     ※     ※     ※




学年対抗戦は開会式を終え、遂に幕を開ける。

各々のクラス、やる気に満ちている。


オレも、ポーカーフェイスを保っているとはいえ、モチベーションはかなり上がっている。

しかし、それは皆同じでワルワを中心として円陣を組みクラスメイトに気合いを注入した。


今回の学年対抗戦、一年で最も注目されているクラスはCクラス。その理由は考え方が安直ながら、NO.10の十人の、多くがこのクラスにいるから。


NO.10とは入学式で首席から十位に入った者達の事を指すのだが、そんなNO.10の内の3、5、8、10の四人がCクラスにいる。なんともアンバランスな。


しかし、首席と次席もいるとしてなんだかんだオレ達Dクラスも注目されていたりする。オレが言わなければ、恐らく散々な結果を見せ周りが興醒めしてしまうところだったよ。


しかし事実、オレはCクラスが強いと言うのは不謹慎ながら喜ばしい。何故ならば、ミリーゼを襲うよう依頼したその主は紛れもなくCクラスに存在するから。


オレの見る限り、必ずCクラスは決勝にいけるほどの実力を持っている。しかし、だからこそ依頼者を潰すのに都合が良い。


曰く、そいつはトーナメント戦に出るらしい。だから、必ず決勝に行く。まあ、クラスメイトにかかってるんだけどな。


さて、最初に始まるのは射撃戦。

内らのクラスからはエヴァも出るので、油断大敵とは言えども心配する必要はないだろう。


「それではただいまより、射撃戦を開始する。一組目の者は壇上に」


審判の言葉を聞き、一組目が始まる。

全部で五組あるが、その中でエヴァは五組目だ。


壇上では組ないで一人づつ二回、的を狙って撃つのだが、今年度は少し仕組みを変えており空に飛ぶ的を狙うという風なルールになっていた。


しかも、その的は徐々に小さくなっていき当てる難しさも更に上がる。そのため最小にいけた者は一人もおらず、いても最小の一つ前止まりだった。


「それでは、最後に五組目を始める」


凜とした表情でエヴァが壇上にあがり、五組目が開始される。AクラスからCクラスまで行われ、因みに最小まで言った者は一人、Cクラスの少年だった。どうやら、入学試験八位の者だったらしい。


そして、エヴァの番を迎える。

順調に的を射貫いていき、そして遂には最小サイズにまで行った。


「────ふぅー………」


緊張感が漂う中、エヴァは一度深呼吸をして心を整える。そして、極小さな的に狙いを定め彼女は手を掲げる。そして、


炎矢フレイムアロー


無詠唱で創られたその炎の矢は一直線に的に向かい、そして穿った。


「よっし!」


エヴァは大きな声で叫びガッツポーズをした。やっぱりアイツは流石だな。

オレも続かねえと。

自分に改めて気合いを入れた。


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