第37話  問題発生

翌日になり、ミリーゼは無事にベルドラにアクセサリーを渡すことができ、本人も最初は緊張していたが渡し終わった後は、それはもう幸せに包まれたホッカホッカ顔だった。


その後も順調にオレとエヴァでミリーゼのキューピット役を担い、二人の距離はより深まり始めようとしていた、学年対抗戦五日前。、


前世でも起こることのなかった事を、オレは見てしまう。




     ※     ※     ※





学年対抗戦まで、後五日となった。

オレもエヴァと共にミリーゼの恋愛作戦をささえてやっている。アイツらは中々調子が良さそうなのだが、しかし、オレにはある大きな問題があった。


それは学年対抗戦の練習で見たところ、クラスの皆が魔法がそこまで得意ではなかったと言うこと。そして、オレが教えようと近付くと、断りを入れられ逃げられてしまうこと。


他のクラスの様子を見ると、皆オレ達のクラス並みかそれ以上に魔法が上手い。詠唱短縮や威力を上げたりと、それぞれで工夫をしている。


正直このままでは、学年対抗戦は絶望的。最下位間違いなしだ。エヴァの場合、男子は「ワーイ\(^o^)/」といった風に喜び溢れ出させて魔法を教わっているのだが、女子はエヴァのオーラに圧倒されているのか、オレのように逃げてしまう。


如何したもんかなー………


頭を悩ませながら、放課後の学園校舎をトボトボと歩いていたときに、向こうから高い音と低い音の混ざったような複雑な大声が聞こえた。

高い音は……悲鳴か?


オレは声のする方へと歩いて行き、徐々に声は近付いてくる。そしてたどり着いたのは人気の全くと言って良いほどにない場所。


そして、幾つかの人影が見えたので即座に隠れ、壁越しにそいつらを見る。


「おいおい、暴れんなって~」

「優しくするからよぉ」

「や、やめぇ、むむぅ!」

「静かにしろっての。おら、さっさと脱がせ」

「はいはーい」


………おいおい、嘘だろおい。

中学生でこんな奴らいんのかよ。流石に驚きなんだが。しかし、今の内に助けるなんだが、間合いがわからん

オレが助けに行くタイミングを計っていたとき、


「お、結構着やせするタイプなんだねー」

「良い体してるじゃん、


………………は?

今ミリーゼっつったか?

オレの耳でその名前を聞き取った瞬間、タイミングなどくそ食らえと、自分の体はいつの間にか動いていた。男は三人程いて、その内の一人を蹴りで沈める。男はそのまま壁に顔をぶつけた。


「ああ?んだよてめぇ……ってクズ王子様これはこれぶっ!?」


しゃべり出した途端に更に他の男の腹に蹴りを入れ、壁に蹴り飛ばす。

そして、残るのはミリーゼの上に覆い被さり服を脱がせている男。


「あなた、クズ王子さんですよねー。なんですかー?仲間に入れて欲しいと?」

「んなわけねえだろ」

「へぇー。んじゃあ、何しに着たんですかっ!」


問いかけつつオレに拳を向けてくる。遅いパンチを軽々避け腹に拳を打ち込んだ。そのまま膝をつけ床に倒れた。


「それ、普通なら分かるだろ」


まあ、こんな事する奴らに分かるわけもないか。オレは未だに消えないコイツらの怒りを心で押さえつけつつ、淫らな姿となったミリーゼに声を掛ける。


「お前、どこも触られてねえよな」

「は、はい。脱がされるだけですみました。でも、怖かったです……」

「ああ、もう大丈夫だ」


優しく声を掛け、彼女の心を落ち着かせる。それからしばらくしたあと、ミリーゼは服装を整えさせると、オレの手を借りつつ立ち上がる。


「ミリーゼ、コイツら誰か知ってるのか?」

「い、いえ」

「分かった、取りあえず先生に連絡を……」

「い、いえ。だ、大丈夫です……」

「何が大丈夫なんだよ…伝えないとダメだ──」

「み、皆に知られたくないんです。こんな事…」

「…………分かった。じゃあ取りあえず先に行ってくれ。後はオレがやる」


ミリーゼは頷き礼をしたあと、駆け足で去って行った。


「さて、と」


オレは片手で指をパキリと鳴らすと、壁に背もたれを掛け動かない男に近付いていく


「……どうするかな」

「や、やめてくれ。な、何もしないでくれ!」


今のオレはまるで悪役のようだったが、それだけ怒りがあったと言うことだ。友達を、それも恋している奴を襲ったコイツらを殺してやりたい。しかし、それではコイツらと同類だ。殺気を溢れさせつつ、脅す。

まあ、こんなところかね。オレは一言最後に言おうとしたとき、男は言った。


「や、やめてくれ!俺達はただ雇われてやっただけだ!」

「……は?」

「だから、俺達はただ金で雇われただけだ!」

「………そいつは誰だ?」


そして、その名前を聞きオレはやることを心には決めた。

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