第15話 メレナVS魔族
この異世界には五つの種族が存在している。
その中でも八割を占める三つの種族がいる。
まず、
次に
そして魔族、体が黒い事が特徴的な種族だ。角やら羽やらが生えていたりと特徴が多いが、最も特徴的なのは赤い双眸だ。目の中が真っ赤に染まっており大抵人のような容姿をしていようとも目が赤ければ最低でも魔族だ。この魔族は魔法に関して遥かな才を持ち、獣人族に並ぶほどの運動神経を持つ。
この魔族という存在は圧倒的で、また野蛮な者が多いため、余り良い印象がないのがまた特徴的だ。
───閑話休題───
メレナと対立している男は間違いのない魔族である。その証拠に紅色の双眸がはっきりとオレや姉さんの目にも映っている。すると、その魔族の男は笑いながら言う。
「ケケケ、女。お前、女の割にはちったぁやるじゃねえか」
「ははっ、当たり前だ。俺は実力には自信があるからな。魔族のお前は逆にあんまり強かぁねえな」
そう言うと、魔族の男は首を曲げ、ポキポキと音を鳴らしながら言う。
「ま、本気出してねぇからな」
刹那、男はいつの間にかメレナの目の前に立っていた。メレナは慌てて反応し拳を振りかぶるが、殴るより速く彼の拳がメレナの腹に炸裂する。
「ぐはっ!」
痛みにより声を発し、それと同時に吐血する。
彼女はそれからヨロヨロと腹を押さえながら後ろに下がっていく。
その後、ゆっくりと彼女は顔を上げる。そこにあるのは辛そうな顔ではなく、笑顔である。
「んだ?その笑みは?」
「強い奴と戦えると、俺はつい笑っちまうんだよ。さあ、もっとやろうぜ!」
彼女は顔の笑みを崩さないまま、男の元へ向かっていく。それもかなりのスピードで。
男の前に立つと蹴りを入れる。が、その蹴りを男も蹴りで受け止める。
次にメレナと男の拳と拳がぶつかり合う。そのぶつかり合いの衝撃波はこの空間の空気そのものを揺らしていた。
すると、メレナが更なる反撃に移る。拳の連打を男に次々と繰り出す。しかし、それを避けられ受け止められる。すると、その拳を受け止めるとそれを投げるように離す。するとメレナは態勢を崩し、そのスキをすかさず男は蹴りを入れる。しかし、それをメレナは腕を使ってガードする。
メレナはその蹴られた足を掴むと自分の方に向かって引っ張った。男が引っ張られるとその男の顎に彼女は蹴りを入れる。
男が吹き飛び回転しつつ地面に着地すると、メレナは更に急接近し今度は膝蹴りを腹に食らわせる。
「…………戦いに集中してるからか私達は眼中になさそうだな。皆も逃げたし恐らくアイツなら勝てるだろう。私達も──」
「いや、どうだろうな」
オレの言葉にローナ姉さんは少し眉間を寄せた。
「どういうことだ?」
「簡単な話、メレナが負ける可能性があるってこと」
見ているところ、確かに徐々にメレナが押しているようにも見える。しかし、実際相手の方がまだ体力を温存しているように見えなくもない。一方、メレナと言えば先程の腹パンがかなり効いているのか、かなり動きが鈍く見える。
これはどうなるかはわからない。
「非常事態を考えてオレはここに残るけど、姉さんは?」
「………まあ、お前が残るなら私も残ろう」
本当はメレナのことも心配なクセに。素直じゃねえな。
そんな事を思うオレだが、ここからは呑気な事も考えてられなかった。
男はメレナに更に腹パンを喰らわせた。立ったままではあるものの後ろに勢い良く下がっていく。
すると今度、男は紫色の魔方陣を展開する。
『我に宿るは体裁の雷 その者に裁きを与えよ
すると、魔方陣から紫の電光がメレナの体を穿つ。胸のあたりを紫電気の槍が貫通した。同時にバリバリィィ!と静電気とは比べものに鳴らない程の音が鳴り響く。
メレナの体は薄黒く焦げ、また口からは黒い煙が出ていた。彼女は目を白眼にし、体は未だに攻撃により帯た、紫色の電気がスパークを放っている。ショックにより気絶寸前のようだ。
マジかよ!流石にこれは不味くないか!?
オレはメレナの助太刀をしようと一歩前に足を出した。しかし、すぐに足を止めた。
何と、あろう事か彼女は自分の顔を思いっ切りぶん殴った。おいおい、何だよその意識の起こし方。
しかし、事すぐに魔族は更に拳の連続攻撃をメレナに食らわせる。あらゆる所に男の拳が入っていく。ドスドスドスドス!と止むことのない拳の雨。しかし、これでやられるメレナではなかった。
メレナはその連打の中で拳を握り締め、彼女は男の腹に一発、パンチを決める。男の連打が止むと、空中に男が浮遊しているうちに魔法を発動させる。オレと戦ったときのように腕が銀色に染まっていく。これは『硬化魔法』で皮膚を堅くすることの出来る魔法だ。これは詠唱を必要としない魔法なのですぐに発動が可能だ。
その銀に輝く拳から、連打が繰り出される。男の体に彼女の鉄拳が連打として炸裂する。そして数秒間殴りまくった後、彼女は拳を握り締め詠唱する。
『燃える鉄拳よ その悪き者に 粛正の拳を
彼女の拳は銀から紅の炎に染まる。その炎の鉄拳は渾身の一撃と言わんばかりに男の腹に炸裂した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます