ハッとしてgoods

事情通の女史から入手した情報によると、どうやらマキマキは僕より三つお姉さん

僕が中学生の時、彼女は女子高生

僕が高校生の時、彼女は女子大生

当たり前だが年齢の差は決して詰まらない


引き算での年齢差は絶対に詰まらないが、割り算で計算すれば年齢差は徐々に詰まっていく

100歳も103歳も大して変わらない





今回発足した飲みメンバーをおさらいしておこう


津島

僕の弟子で信頼できる男

年齢は28歳でなんとバツイチ

長身で若さなりの洒落者

アイドル好きを公言

次男坊気質が少々強く、飲み会の幹事なんて絶対にできない


斎藤さん

2年くらい前からパートとしてうちで働いている

年齢は33歳くらいで既婚の子無し

ダイエット嫌いだそうで、触って確認したわけでは無いが腹部はかなりヤバそうに見える

相当の酒好き

気が強そうに振舞っているが、性格は良い

色白で、もう少し痩せれば相当いけてる女


真木さん(マキマキ)

斎藤さんと同時入社。彼女の場合はパートでは無く派遣社員

年齢は44歳。既婚で娘がひとり

仕事のスキルはかなり高く、前出の情報通女史に絶賛されている

ご主人は単身赴任中で、日常は娘との二人暮らし


今の部署は10年目。既婚で息子二人

年齢は41歳。夫婦仲は普通に円満

全然イケメンでは無いが、逆にキモメンでも無い。多分

遅刻はしない。仕事を溜めない


このメンバーでなんとなく飲みにいく会が発足

連絡はライングループを作って、そこでやりとり

個人的なやりとりは、既婚者だらけなので自重


第一回は僕が選んだトルコ料理店→斎藤さんが行ってみたかったカフェバー

第二回はマキマキが選んだお洒落居酒屋→通りすがりのダーツバー

第三回は僕が選んだビアガーデン。二次会は斎藤さん不調につき割愛


津島は店選びに1度も介入してこない

これが津島と言う男


定期的に集まって飲んでいたのだが、第三回を最後にこの集まりは現在休止中


特に揉めたわけでも、飽きたわけでもない

強いて言えば、日程を決めていた僕が招集をかけなくなったからだろう


そのきっかけは三回目のビアガーデンの帰路にある


偶然にも4人の帰宅経路は別々

なので解散後に誰かと一緒に電車に乗って帰る事は無い

この日もいい気分で、ひとり地下鉄に乗り

ドアが閉まった瞬間


もう10秒早く携帯が震えれば

トイレにでも寄ってもう1本遅い電車に乗っていたら

地下鉄は駅を離れていたのに、まだ乗っていないと返信すれば

タラレバは尽きない


ドアが閉まった瞬間

携帯が震えた


マ:酔い覚ましにお茶でも飲みませんか?

僕:もう電車に乗ってしまった・・・

僕:超後悔・・・

マ:もうこんな時間だったんですね

マ:おやすみなさい

僕:おやすみなさい


チャンスの神様は前髪しか無いとか聞いたことがある

絶好球が来ているのに普通に見逃した?

酔っていたから?



単に女性とのやり取りに慣れていないだけ

ブランク有り過ぎで空気が読めない僕


脳をフル回転させて考えた


マキマキがラインしてきた時、彼女は斎藤さんや津島とも別れていたはず

そもそも女性から声をかけてくるのだから、僕に好意が多少はあるはず

三回の飲み会の中では二人で話す時間帯も多かったはず

それなりに意気投合し親密度も上がっていたはず

不確定な“はず”の連射

そして気づく


あ!

そうか!


マキマキが僕に好意を持っているかどうかはは不確定でも、僕がマキマキに好意を寄せている事は確定

あまりに第一線から遠ざかっていたので、こんな簡単な自分の気持ちにさえ気づく事ができなかった

一生の不覚


結局、地下鉄を降りて引き返すと言う思考に至らず、自己嫌悪の沼に沈んでいく僕

後悔はしない派なのだが、この時は後悔して後悔して後悔していた

これが酔っ払いの思考?


とにかく

①僕はマキマキに好意を抱いている

②マキマキもソレに気づいている可能性が高い

③都合よく考えればマキマキも僕に好意を抱いている

④これって相思相愛?


僕の能力“思い込み”を発動させて

思い切って今度

何かしら理由をつけて食事に誘ってみよう

この辺りの弱気な思考が第一線から離れている所以なんだろうか?



そんな簡単な事じゃ無い

彼女も僕も既婚者なのだ

ブレーキは常に踏んでいる


自問自答を続けながら、僕は早足で駅からの帰路を進めた




居酒屋でひとり、先に待っていたマフラーを巻いたイスラム美人は、いつの間にか僕の中で、とても気になるマキマキになっていた


マキマキ=真木眞紀さん





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