第59話 最後の戦い

翌日になり俺はドラコを発射台付近に呼び出した。

「どうしたんじゃ。トオル」

今更誤魔化しようもないし、素直に愚直に聞くことにした。

「ジェーンに聞いたんだ。精霊の遺跡にあった古文書がどういう内容だったのかという事を」

「ふーんそれでどんな内容だったんだ」

しらばっくれるでもなく、動揺するわけでもなく、自信を持って俺に切り返してくる。


「古文書には第5の精霊が揃えばドラコは進化すると書いてあった。それはジェーンのお腹にいる子供のことか?」

「そうじゃ。よくわかったな」

「ということは精霊を使って俺とジェーンを近づけさせたのも思惑の内か」

「子供が欲しかったのでしょうがないなぁ」

俺は右手をきつく握りしめた。今まで信用してきたドラコに裏切られた気持ちになった。手と声が震えるようになってきた。しゃべる声もだんだんとかすれて行く。


「子供ができたら俺とジェーンを食べるつもりだったのか」

「そのようなことはせんよ。ジェーンとお主を戦わせて残った方の精霊をわしがいただく。本当の筋書きはそうだったのじゃ」


「だから王佐の才とか言ってたのか。どこかで入れ知恵をして仲違いさせる予定だったのか」


「まあそんなもんかの。なかなかお主と生活するのも楽しかったぞ」


「最後にひとつだけ聞かせてくれ封印の秘密がよくわからなかった」


「封印ではない。わしは異世界から放り出されたのじゃ。そして南の氷の中に閉じ込められておっただけよ。この恨みは晴らさなければならない。ゆえに第5の精霊を得て進化するのは絶対条件じゃ」


「残念だよドラコ。いい友達になってたと思っていた」

「わしもそうじゃ。因縁というやつじゃな。かかって来るがよい。お主らの攻撃なんぞ、わしには効かんぞ」

そう言いながら空をホバリングしていたドラコはゆっくりと降りてきて俺の目の前に立ち塞がった。


絶対的なチャンスは今しかないと思った。


『ダウンバースト』

『トルネード』


やつを飛ばないようにダウンバーストをかける。 そして弾丸の通り道を作るためにトルネードをやつの体にぶつけてやる。

ジェーンに目線で合図を送るとジェーンは三点バーストで通り道に弾丸を撃ち込んだ


ドラコは以前にオーストラリア軍より銃撃を受けたことがある。同様の攻撃と思い余裕綽々で攻撃を待ち受けていた。

だが銃弾はドラコの体に突き刺さった 。


古来よりことわざには矛盾というものがある。貫けぬものはない矛とどんなものでも防げる盾。実はこれの答えは槍が勝つのだ。同じ強度のものであれば動かない盾と違い突進スピードのある矛が力場的に勝るのだ。「衝撃力は速度の二乗に比例する」車を乗る人間なら誰でも知っている。何故弾丸が柔らかい鉛でできているのか。それは鉛が毒であり相手の体内で弾が止まるように設計されている。鋼では貫通するので、弾丸の殺傷力が弱まるのだ。


俺は無線で

「アルファ1アルファ2共に攻撃せよ」

と伝達すると沖縄基地から発進して空中待機していた2機の F 35 A がドラゴンに近づきミサイルを発射したのであった。軍事衛星2機で監視している状況からの逃げ場はない。


マッハ2を超える2つのミサイルはドラゴンの体を貫き爆発していたのであった。


溢れ出る血が本来のドラゴンの成分による再生が始まっているが、それをさせないために俺は持ってきた黒竜でドラゴンの中心点に突き立てた。

「わしの負けのようじゃ」

「ああ、長く世話になったなドラコ」

「儂からの最後の願いじゃ。お主らの子は精霊となるか、親和性の高い子になるかはわからぬが、我が一族が助けを求めた時は助けてやってくれるか」


「子供がいいって言ったらな」

そう答えるのと同時にドラゴンが力尽きていくのが分かった。

作戦は早朝に行われた眩しい朝日の中で黒くひかり眩しく輝くドラゴンの体躯は美しい山のようだった。


「残念だったわね」

ジェーンはそう言いながら俺の背中を抱きしめた。


後は残ってるのは奴らだけだな。

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