第52話 新ネットワーク構想

俺は政党作りに飽きてしまったので前田さんに全て任せた。頼れる選挙対策だ。専門的には選対委員と言うんだったかも知れない。候補者も決めてしまったし、後は楽なもんだろう。出口調査も意外なことに我が党は圧倒しているらしい。


「そんなわけで前田君、後はよろしくね」


いつもの必殺技丸投げである。こういうことは詳しい人にやってもらう。それが正しい方法だと思っている。決して面倒くさいとか、そういうことではないと自己弁護をしながら新しいことを始めるのだった。意外と責任者を育てる為に責任ある仕事を任せながらうまく誘導して行くというのは大変だ。細々と愚痴を言うのは上司の仕事ではない。


次に始めることそれはググってもカス対策だ。一昔前ではググレカスという言葉が流行っていた。それは G○○gle 検索という機能を使って調べてから質問に来いと。それから質問しなさいという意味だった。ところが最近はググってもカスと呼ばれるようになってしまった。ググって出てくる結果が全く役に立たないアフィサイトばっかりなのだ。

アフィサイトとは広告 (アフェリエイト)関連付けがされたサイトで広告を見せる事を目的に作られている。


例えば人気ドラマで検索をするとおすすめしたい人気ドラマ百選みたいなのが出てくる。これがいわゆるアフィサイトと呼ばれるもので管理人が適当に100個選んでるだけである。全ての情報が無駄で役に立たない。 SEO対策が進み全く意味のない情報ばかりが前面に出てきてしまった。ネットは終わったと嘆く人は割と多い。


PCなんかは、まだマシでスマホ関係はアプリの権限に最後に同意してしまうと

写真とかの個人情報からありとあらゆる情報まで泥棒したい放題である。


私はパソコンで一度ブラウザーというものを変えたことがあるが、その時に銀行口座の番号とパスワードがコピーされているのが怖かった。便利さを最優先に上げ過ぎていてセキュリティがおざなりになっている


そこで考えついたのが銀行専門スマホだ。 IPネットワークを使わず新たなネットワークで銀行と端末とのやり取りをする。個人認証は生体認証で行い、銀行から下ろすキャッシュディスペンサーの生体認証で引き落としできるようにする。かなり安全だと思う。この銀行専門スマホには銀行保証が付いているので銀行が認めた企業以外は出品できない。

「まあこんなことを考えてたんだけど、どう思う加藤さん」

「そんなこと考えてたの?馬鹿じゃねえ」

「スマホでいいですよ。川上さん」

加藤さん山田さんは反対派のようだ。

「だってカード持たずにディスペンサーに行って指紋でお金おろしてくれば簡単だろ」

「残高も指紋認証スマホで見れるんだから簡単じゃん」

「まあ好きにしてみればいいじゃん」加藤さんはそう言うと去っていった。きっと興味がないんだろう。

「言ってることは分かりますけど私は特産品作るので大変なので今回はパスです」そう言って山田くんはどこかに消えていった。


俺は政党資金の時にお世話になった四菱銀行の担当者に色々聞いてみた。

「…というのを考えているんですがどうですかね」

「思ってるよりは悪くないですよ。でもキャッシュディスペンサーってものすごい高いんですよ1台だけ試しで作ってみます? 」

「メーカーはどこにあるんですか」

「うちのグループ関連会社ですね1台2000万も見てもらえれば大丈夫だと思いますよ」

「こうして指紋だけで下ろせる銀行口座を種子島でスタートさせた」


まずはうちの社員から実行させた。この銀行を給与口座で使った場合いは貯金の年率1パーセントが支払われると案内した。一応不安な面もあったのでキャッシュカード、口座専門スマホを同時配布されることになった。

「いや使ってみると便利だねこれ」加藤さんはそう言って喜んで使っていた。

「残高調べに行かないのは便利ですね。これからはこれ使いますわ」そう山田君は言っていた。


翌日に銀行担当者と会って打ち合わせをした。「川上さん結構これすごいですよ。人気もありますし使い勝手もいいし。でも薄利なんですよね。 日本全国に導入してやっとプラスになるぐらいです。企業はどれくらい参画してくれるかによって変わってきますけど、どうしますか」


これは簡単に言えばもう興味はほとんどないけど、実際にやるの?という質問だ。でもここで止めてもしょうがない。まずはセキュリティ専門スマホの試作品を作ってみようと思った。国内のスマホ製造会社が手を上げてくれたようで試作品を依頼した。


届いた試作品をいつものグダグダ3人集と社員に分け与えた。その感想次第では量産に入ってもいいと思っている。

一週間経っての感想は使いやすい銀行は便利。だけどアプリ関係は全然ダメ。アプリで遊べない等々言われた。


俺と銀行関係者そしてスマホ製造会社の関係者はこの試作品の結果は悩ましいものだった。とりあえずスマホ製造会社の方にアプリを増やしていくように頼んだ。もうしばらく様子見だろう。 現行では銀行口座の代わりのスマホとしては良いが、アプリがつまらない物しかない。スマホが2台持ちみたいになるのだ。この際銀行とかのお金用のセキュリティの高いネットと遊び用のネット用途で分けるのも良いかも知れないと悩んだ。


徐々に浸透しとくといいなあと思いながら、ドラゴンの背中に乗って散歩していた。

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