第32話 風の祠
一部の消えた糞は気にはなるが、一応の問題は収束したように見える。農家である自分には調査してくれる機関について心当たりはなかった。何でも頼るようで申し訳がないがジェーンの母国であるアメリカの大学に少量の血液を調査するように手配してもらった。CDC は帰っていったので一応の調査は終了したと思っている。
調査結果によって人体の損傷が治ったり、病気が治ったりする等のことがあったらどのようにすればいいのだろう。最近はドラゴンのびっくりするようなことばっかりで頭痛の種は減ることはなかった。
さて、次の精霊の居場所であるがアイスランドである。おそらく風魔法を習得することが可能であるだろう。ジェーンと二人で魔法をうまく分けることに決めたのだが、自分が風と水、ジェーンが火と土に分ける事にした。なんとなくの組み合わせではあるが火と風の組み合わせは危険なように思えるので、そこを分けているつもりである。
今回アイスランドを飛ぶにあたって加藤さんがそれでは乗りにくいだろうと二人が乗れるように布と金具を作ってくれた。なんて余計なことをしてくれたんだ。合法で体を触っても大丈夫な夢のような時間はなくなってしまった。血の涙が心の底から出ている気がした。 そんな俺を馬鹿じゃないのという顔をしたジェーンが見ていたのだった
アイスランドは北ヨーロッパの北大西洋上に位置する島国で、共和制を取る国家アイスランド共和国である。その大陸の中心部分に高原ハイランドがあるが過酷な条件のため人は住んでいない。人が住んでいない場所なので見つからずに進むのは非常に簡単だった。ドラコに案内されて風の祠に進んでいった
進んでいくと白い石で作られた大きな柱で支えられた祠のようなものに着いた。そこには守護者がいたが、今回はキツネのようである
特に難しい事は考えずにいつも通りに食事を提供するだけのことである。なんかすごい役に立っているという自信は全くない。昔は神に食事を神官や巫女が渡していた気もするし、まぁいいだろう。さして言うならば現代の神官が自分になるのだろうか。
今回は時間があったので魔法の習得を祠の中でする事にした。
自分の中の器と精霊を混ぜるという感じなのだが慣れたように思えても時間がかかってしまった。1時間ほどするとどうやら取得できたようだ。壁に向かって「ウィンドカッター」を出してみた。それを見た瞬間に俺はぎょっとした。すぐさま録画しているカメラを止めた。そして今映った部分の録画をその場で削除した。ウィンドカッターといえばアニメやライトノベルなどで大活躍しているが現代社会においてはやば過ぎた。無知覚に近いと言えばいいのだろうか。見えず、無臭、無音の魔法。これを避けたり、かわせたりする人間はいないだろう。首に向かって正確無比に放たれるウインドカッターは想像するだけでもやば過ぎた。風やかすかな音を知覚出来た時には既に死が訪れているだろう。
そういった危険な魔法であることをジェーンに告げて納得してもらった。ふたりの秘密です。もっと愛らしい秘密なよかったな。こんな殺伐とした殺しの技を最初の秘密にするのは気が引けた。簡単な旋風のような魔法ができないか検証し、「ウィンド」と言う旋風(つむじかぜ)の魔法を作った。これを録画して今回は終了とした。しかし今まで火や水などの魔法を取得してきたが今回のだけは本当にやばい。対人戦では無敵なのではないだろうか。もちろん、ドラゴンは人ではないのでカウントしない。
動画を撮り終えた俺とジェーンは基地へと戻ってきた。 いつも通りデータはコピーを取り小島さんに渡した。もちろん柳沢さんにも届くように手配させた。募集していた従業員は若干名増えたようで人手も少し楽になった気がする。ただ動画の度に電話はずっと鳴りっぱなしだ。ほとんどの問い合わせが、どうやったら魔法を習得できるのかと言った内容だったり、何処に行けば習得できるのかといった質問しかない。回答についても企業秘密ですとしか回答はしていない。企業秘密の一点張りで隠してきた。だがそろそろスパイなどの可能性や内部流出を考慮し、セキュリティ問題を何とかしなければいけない。魔法というものに取り憑かれた人間は数えられない程いるだろう。彼らが企業秘密と言う名目だけで収まるとは当然考えることはできなかった 。
加藤さん山田さん俺のいつものグダグダ3人者が集まった。
「加藤さん。セキュリティがちょっとやばいと思うんだけどどう思う」
「自衛隊もいるけどちょっとやばいかもね。電子機器買ったら? お金あるんでしょ」
「加藤さん。そしたらドラゴンパークは入場するのに金属探知機入れる?」
「そうですね国宝飾るので国側で対処してくれるとは思うんですけども、一応金属探知機と防弾ガラス等で固めた展示ルームが必要かなと思います」
「そういえば国宝だったから保管のセキュリティや施設の管理は本来は文化庁の仕事なんだよな。でも、あいつらに投げても仕事しないんだろうな」
「トオルちゃん。役所の役人は信用しちゃダメだよ。自衛隊の一部は大丈夫だけど役所は気をつけた方がいいぜ」
そう加藤さんは 愚痴のように役所の悪口を言っていた。文官が指揮権を持っているとはいえ、やはりやりにくいのだろう
アイスランドは綺麗な場所だったなぁと思い出しつつ、ドラゴンパークのセキュリティについて考える俺だった。また、アイスランドは寒かったので南極へは防寒対策をしっかりしないと死ぬかもしれないって…あれ、ドラコは何故平気なんだろうと疑問が残った
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