第31話 疫病管理センターとDNA
俺と柳沢さんは緊急でカンファレンスを行うことをすぐに決定した。柳沢さんは必要な関係者が揃うまで、ちょっと時間が欲しいという事だった。遅くとも明日の朝には始めたいと言うことになった。
明朝になり緊急カンファレンスが始まった。参加者は D 対策本部とCDC(アメリカ傷病管理予防センター)、農林水産省、厚生労働省、国内の感染予防センターが参加者となった
まず最初に加藤さんが話を始めた
「ドラゴンが1日あたりにする糞の量から計算して取り出した分量を計量してみると多少消えている。人為的な盗難のような可能性は否定できない」
「加藤くん。糞というのは今後 DNA と発言するように、議事録もそのようにお願いします」
柳沢さんは表現が気に入らないのか、そのように書記係の人に指示をしていた。俺は心労の悪そうな書記だけは絶対にならないと心に誓った。
続いて CDC から英語で発言があった。通訳さんが居たので教えてくれた。
「未知の生物を疫病検査せずに国内に入れるのは愚か者のすることでは? すぐに DNA 、血液、唾液といったものを我々に送るべきです」
「アメリカさんの懸念はわかりますが、これは日本国内の問題になりますので、国内での検査を優先したいと考えてます」
厚生労働省の役員がすぐに反発した。
「国内の感染予防センターでも調査は可能であると考えているので、まずはそれからということにしたいのですがいかがでしょうか」
そう発言したのは農林水産省関係者だった。
会議が進んでいる間に俺はどこまで情報を与えていいのか考えていた。コモドドラゴンと言うドラゴンに似た生物がいる。この生物は噛みついた時に毒を出せるようになっているとのことだが、血液中には抗生物質もあり治療にも役立つとも言われている。 iPS細胞を作らないことを条件に提供するのであれば可能であるかも知れない…優柔不断な俺にはきっちりと決めることはなかなか難しかった。また、iPS細胞への知識も乏しい。
「 DNA と唾液については可能と考えています。ですが血液については本人の了承を取りたいと思いますので今しばらくお待ち頂きたい」
俺は最後にそう発言し会議を締めくくった。
その夜に俺はジェーンと ドラコと集まって話し合いをした
「…というわけでドラゴンには大丈夫でも人間には害がある可能性があるので検査をしたいと言ってるんだ。その時に血液も取りたいらしいが今は技術が進んでいて iPS細胞や詳細な血液検査に使用されるかもしれない」
深刻な顔でそう言ってた俺に対してジェーンは頷くようにしてしゃべった。
「そうね DNAまでは大丈夫だと思うけど 、血液はやめた方が良いと私も思うわ」
それを聞いていたドラコが重たい口を開いた
「血液は駄目じゃ古来よりドラゴンの血液は万能薬として知られておる。大量に抜かれて研究されるのはごめんじゃー」
いくら世界に一人だけのドラゴンといえど実験動物にされる謂(いわ)れは、ないはずだ。そういった事や国から身を守るためにも魔法を習得している訳であって、ここははっきりと言うべきだと決断した。
「そうだなドラコの言うとおりだ。明日面と向かって断ってくるよ。断り文句としては10mlを100億 US $で売るということでいいかな」
翌朝同じメンバーで始まったカンファレンスで俺は
「糞については少量の糞を提供するが血液については提供しない。欲しければ10ml を100億 US $で売る」と発言した。会議はざわざわと騒ぎが始まり次第に荒れ始めた
ここで意外なところから手を差し伸べられた
「もうすでに種子島で住んでいるので問題ないんじゃないでしょうか。隔離すべく施設も出来上がってますので大丈夫だと思います。離島なので、なお安全です」
そう柳沢さんがフォローを入れてくれた。つまりは種子島で既に安全な実績がある。このことにより DNA の提供で収まりそうだ。
しかしドラゴンの血液については個人的に興味があるので、後でジェーンの伝手を使って調査をしておこう。ヒールと同じ効果が出るなんてないよな。
一抹の不安を抱える俺だった
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