第11話 種子島で始まる生活
数日間の船旅を終えて種子島の南側の港へ入港した。やっと帰ってきたという気分である。船酔いはわりと酷い物であったので到着した時はホッと安堵した。出迎えには柳沢さんや加藤さんが来ていた。加藤さんは大尉へと昇進して現在の本部に勤めている。
種子島は九州の鹿児島県にある大隈諸島を構成する一部である。 人口は約3万人程度であり、程よい文化圏を作っている。種子島が選ばれた理由は赤道線に日本国内で近いこと。また、他にも沿岸漁業者との干渉が可能な限り少ないこと、必要な用地面積がすぐに入手でき、かつ土地造成がしやすいこと、通信・電力・水源が調達できること、できるだけ交通の利便性や、人員・資材・機材等の輸送がしやすいこと、人口密集地帯からなるべく離れたところなどの条件が考慮された。
とりあえず基地ができるまでは宇宙センターの使用していない発射場を使うことになった。柳沢さんから基地についての内装や間取について相談されたが2-3日考えさせて欲しいと回答をしておいた。
そんな中、柳沢さんから仲介されて紹介されたのがN○Kアナウンサーの小島さんだった。
「初めましてN○Kの小島ゆりです」
そんな小島さんは清楚な感じのする20代前半と思われる若い女性だった。
「初めまして川上です。今回はご相談ということで柳沢さんから聞いてますが、どういったご用事でしょうか?」
「はい川上さん実はN○Kでドラゴンのニュースとドキュメンタリーについて放送を考えていますので、その撮影の許可と出演についてのご相談なんです」
現在ニュースの映像についてはCNNからN○Kなどの雄各放送局に渡されている現状である。当然自社で映像を持った方がより儲かる仕組みであるので各社がオリジナル映像を持ちたいと考えているようだった。
「一応CNNにも義理があるので向こうにも了承を得てから回答したいので2-3日待っていただけますか?」
そうお茶を濁してその場を颯爽と後にした。この事についてジェーンに相談してみた。
「そうねプロダクションをトオル自体が持った方が儲かるんじゃない。というか美味しい話ね。私も一枚噛ませてもらえないかしら」
はっとした表情でニヤリと含み笑いをしながらそう答えたジェーンは悪だくみをしている代官の様な表情をしていた。
「ジェーンも気づいちゃったのね。まあ俺も映像関係のプロフェッショナルの人は欲しいから別に構わないけど・・・」
そう返事をした俺の顔も陰謀を企む宮廷大臣の様な顔をしていたに違いない。
「あー、それとね。税金対策もちゃんと考えといた方がいいわよ。私は東京に戻るわ。トオルの出演料の話もあるし一度整理してくるわ」
そう言って足早に駆け出すと、さっさと東京へ帰って行ってしまった。
残された俺は送られてくる宮崎牛を焼いてドラゴンに食べさせながら暇をつぶしていた。 どうやら宮崎牛の方が美味しいらしく食べる量が増えていたので少し心配していた。
仮設住宅が完成したのでテントから引っ越して仮設住宅に住んでいたある日の晩にその出来事が発生した 。
「GYAOOOO」
騒然と鳴り響くドラゴンの咆哮に驚いて俺は飛び起きた。素早くドラゴンに駆け寄るとその近くには二人の男が倒れていた。カメラを持って倒れていたのでどこかの放送関係者だろう。断りもなく勝手に撮影しようとしたことは許せなかった。その二人の男は縛った後で加藤さんに引き渡した。
身元調査の結果二人は民間放送の社員だということが発覚した。
「撮影する権利がある」「世間に知らせるために必要だった」「報道の自由だ」などという戯言を述べていたが、今後一切許可なく立ち入ること禁止することを決定した。
戻ってきたジェーンから俺はCNNの提案を聞いたのだった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます