第二章 第一話
夜が明けた早朝、屋敷に迎えに来たのは、
従者数人が輿を
(ここが大内裏なの……?)
都には住んでいるが、外れの方なので大内裏を見た事すらなかった。東雲の屋敷を初めて見た時は、その大きさに開いた口が
(落ちついて。人違いですって言いに来ただけだもの。大内裏なんてこれから一生入る事はできないだろうから楽しむぐらいの
あたふたしていたが、そんな事はお構いなしに輿は再び動き出して、門をくぐった。
門の中は、外の町並みとはまるで世界が違うような光景が広がっている。
建物はいくつかあるようだが、輿は中央にある一番大きな建物に向かって進んでいく。
輿が揺れるたびに、
(場違いだって
輿の右隣にいる、馬に乗った東雲を見つめた。背筋を
しばらく進んでようやく輿が止まった。
(うっ、いよいよね。
何とか落ちつこうと胸に手を当てると、輿が地面に下ろされて前方の御簾が上がった。
「
(大事な客をお招きしているような態度だけど、人違いだってわかったら気まずいだろうな)
「どうぞ」
「い、いえ! 自分で出られますから!」
強く断りすぎただろうかと
輿から出て、白い玉砂利が敷き
「ようこそ、
どうやら中庭に降ろされたようで、目の前にはひのきの
朱色と黄金の柱が美しい建物は、庭に面した
苑紫が先に立って歩き始めたので、大人しくそれに続きながら、横を歩く東雲に目をやる。
「東雲様……。すごく場違いな感じがします。できたら帰りたいんですが」
正直な気持ちだった。もちろんできない事はわかっていたが、言わずにいられなかった。
「ここまで来たら、もう主上に会わずには帰れません。
東雲は
建物に入って、廊下を奥に進む。通されたのは、小さな
「準備ができるまで、こちらでお待ちください。東雲。一緒にここで待っていてくれ」
東雲が頷くと、苑紫が従者を連れて部屋を出た。
「……東雲様。主上ってどんな方でしょう」
ようやく二人だけになったのでこっそり聞くと、東雲がやや首を
「実は私も会った事はないんです。数年前に夫君を
「人前に姿を見せなくても、雫花帝としてのお務めは果たせるのですか?」
「雫花帝には、
(そういえば、前に
不知火は、男の子しか産まなかった雫花帝にがっかりしていると続けた。
いくらひそひそ話でもあまりに不敬だったので、よく覚えている。不知火達の話を思い出していると、東雲がこちらを見つめているのに気づいた。首を傾げると東雲が口を開く。
「苑紫達が
心配そうな東雲に頷くと、戸が開く音がした。顔を向けると、苑紫が廊下に座っている。
「おまたせしました。こちらにどうぞ」
いよいよ女帝と対面だと、緋蝶は自分に気合いを入れた。
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