悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される
ぷにちゃん/ビーズログ文庫
プロローグ
秘めた想い
……小さな体と、小刻みに
ふわりと後ろへ
今日は、王立ラピスラズリ学園の卒業パーティー。
卒業生を祝福し、幸せな未来を願いながら送り出すこの良き日。しかし、それとは正反対の出来事がアクアスティードの
──悪役
王立ラピスラズリ学園。
ここは十二
暖色の落ち着いた色合いの校舎は、ステンドグラスの窓が大きく正面に設置されている。
陽の光に反射しながらきらきら
学業と社交を学び、卒業後は一年間、それぞれが進む道の見習いとなる。
しかし今、その伝統ある
この国の第一王子ハルトナイツと、
ハニーピンクの
彼女は今、ハルトナイツが大切にしている女性をいじめたとして、断罪されようとしているのだ。
そんなことはありえないと、パーティー会場にいる
ましてや、この場には国王が
しかし、その中で
アクアスティード・マリンフォレスト。
大国である
この学園には一年間の留学として来ているため、本日の主役の一人でもある。
目の前で繰り広げられているいざこざは正直に不快であるが、アクアスティードにとってはまたとない好機でもあった。どうしようかと思考を
静かに移動し、来賓として卒業パーティーに参加している国王の
この催しを自分に任せて
会場の一番
まさかこのようなことを、自分の
しかし、国王はすぐにアクアスティードの存在に気付く。真っ先に口から出たのは、パーティーに似合わない催しへの謝罪。
「アクアスティード王子か、すまないな。祝いの席だというのに、
「いいえ。むしろ、私にとっては
「……?」
にこりと
「ティアラローズ
「アクアスティード王子!? 何を言っているか、理解しているのか?」
あまりにも
しかし、自分の息子でもあるハルトナイツが婚約者を断罪しようとしていることも事実である。
彼女は
それを理解しているがために、国王もアクアスティードを強く制止することが出来ない。
国王が口を
「私が許可をしよう」
「お前、何を勝手に!」
「何を
主従関係である二人だが、幼い
厳しい口調で言うクラメンティール侯爵は、重度の親バカであった。先ほどから繰り広げられている断罪のやりとりを、心の底から
だからこそ、アクアスティードの求婚をしたいという申し出に対してすぐ許可をした。早くあの場から、断罪されようとしている娘を助けてきてくれと。
「お許しいただき、ありがとうございます。彼女からいい返事をもらえた
「マリンフォレストの王太子であるアクアスティード
「わかりました、覚えておきましょう」
侯爵はアクアスティードに感謝の言葉を伝えるが、それと同時に
しかし、彼にとってはそれだけで十分。彼女を
国王と侯爵に、「では、この場は私が預からせていただきます」と告げて──アクアスティードは会場の中央へと歩みを進めていく。
思い返すのは、彼と彼女の出会い。
しん、と。静かな図書館に、くすりと笑う低い声が
「アクアスティード様、また見てるんですか?」
「……ああ。くるくる表情が変わるから、見ていて
あきれたような声をかけられた男は、マリンフォレストの王太子。
声をかけた男は、アクアスティードがもっとも
図書館の一番奥の席が、彼らの特等席だ。一年間の留学中という彼は、様々な知識を得るために図書館へと毎日のように通っている。
しかしいつしか、その目的は本を読むことではなく、図書館の窓からそっと見ることの出来る
アクアスティードの視線の先にあるのは、綺麗なハニーピンクの花。
可愛らしく表情を変えて、それは楽しそうに本を読んでいる。大きな木に背中を預け、紅茶とお
貴族の令嬢であれば、本を借りて自分の
まさか隣国の王太子に観察されているとは、
アクアスティードが見ているハニーピンクの花は、このラピスラズリ王国の令嬢だ。そして──王太子であるハルトナイツの婚約者でもある。
しかし、そんなことをしてしまえば
そんな想いを胸に
本当は話しかけたい。隣で本を読みたい。
──淡い
しかしその想いは、打ち破られようと動きだす。
しんと、静まり返った会場に、低く
断罪されようとされている、彼女のために。
「そこまでですよ、ハルトナイツ王子。彼女よりも、
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