『魔獣の王』のケモノ:第三の眷属『ヨルム』
24話:一月経った今の俺の生活
地球の日本から、別の異世界であるこの世界に召喚されて1ヶ月の時が経った。
今も俺は洞窟生活を継続している。
こうして穴倉での生活を送っているが問題なく生きていけているので特に不満は感じていない。
食料は外にいる動物や魔物である【魔獣】を狙い狩り食しているので問題はない。
俺は【魔獣】に該当する種類の魔物しか食せないので、それ以外の種類の魔物は出会えば即排除だ。
飲み水の水源の確保も出来たので、脱水に陥る事もない。
あと飲み水用の水源以外にも、洗い物や身を清める為の水場も見つけた。
しかし人って奴は生きる為、いや生き残る為ならどんな環境でも生きていけるんだな、と改めて実感していた。
生きる為の他の物資なんかは、現在でも街に入れないので、街から街へと移動する商人から得た。
金なんかは人に迷惑しか掛けない迷惑千万な盗賊なんかを対象に襲い奪っていた。
無法者は遠慮なく潰せるからいい。
無法者でなくとも敵と判断した者は容赦はしない。
+
朝。
俺―
何をしているかと言えばだが、一言で言えば特訓、訓練が正しい。
「はぁああっ!」
「甘いです、主ッ!」
俺の訓練相手をしているのは、俺の持つ【魔獣】とカテゴリーされている魔物を自分の眷属にする能力で、2体目に眷属化した(正確には寝ている俺の血を勝手に吸っていつの間にか眷属化した)三つ目の蝙蝠型の魔物。名前は俺がキキと銘した。
普段と言うか、本来の姿のキキは俺の掌サイズの大きさだが、今のキキは違う。
今のキキは俺の”人化”のSkillによって魔獣の姿から俺と同じ人間の白銀の髪をした女性の姿に変化している。
身長は俺と同じか少しでかいかな。キキは長身なのを気にしているらしい。
手足も長くスラッとした体形でモデルの様だと思う。たぶんキキを見た奴は振り返るくらいだと思うのだが。
ただ本人は身長よりもっと胸がある方が良かったと思っているようだ。キキとは逆の意味な体形をしている俺の最初に眷属化させたサーベルタイガーに似た魔獣であるファンが”人化”した際の姿が小柄で巨乳なので羨ましいと羨望と嫉妬の視線を向けたりすることもあるみたいだ。
もちろん俺は気にしてない。と言うか、キキも決して小さくはない。日本人から見たら標準サイズくらいだと思う。ファンが大きいだけだから気にし過ぎだと思うのだが、女には女にしか分らない乙女心があるらしい。
「はあぁッ!”風爪”ッ!!」
「させませんっ!」
俺は己の両手の爪に”風爪”を展開し相手であるキキに迫り”風爪”による攻撃を繰り返し繰り出す。最初の頃は片手にしか”風爪”の風の刃を生成出来なかったが、繰り返し使う事で連度が上がり両手で展開し片手は完全、もう片手でも不安定な状態だが刃に出来た。そして今では両手に完全な状態で纏える様になった。
そんな俺の攻撃をキキは以前に盗賊を襲撃し頂いた時の戦利品である先端が槍と斧を組み合わせた武器=ハルバートで”風爪”の威力をいなしつつ躱す。
キキの得意戦術は武術よりも魔法戦術の方が高い。特にキキの結界系魔法は役に立ち便利だ。
その力は武器にも応用でき、ハルバートの強度を結界魔法で包み上げている。
ハルバートも所詮は一般的な武器だ。
でなければ俺の”風爪”を受けて耐えられないだろう。
俺の”風爪”なら鉄くらいであれば一撃でスパっと切断したり粉砕できる威力があると自負している。
実際砕いたりしているしな。
それと魔法メインであるキキだが、けっして武術戦が苦手と言う事はない。
正直実力で言えば魔法抜きにしても俺よりもキキの方が上だ。
最初に訓練で手合わせをした際には見事に数十分も持たず敗北した。
これは俺達の訓練を見て応援している魔獣形態のファンにも言える。
『ますたー、キキも、どっちも、ふぁいとぉ~』
まず基礎となるStatusが俺よりもファンやキキの方が高い。
元々俺の能力は”
目覚めた事で確かにStatusが上昇しており、その辺に転がっている雑魚盗賊なんかの人間や魔物程度なら苦戦せず倒せるだけになっている。
実際ここ1か月間に相手にした奴には苦戦することなく始末している。
だから正直言って物足りなさを感じていたりする。
命を懸ける。
それは生きている実感を得られるので命のやり取りは俺なりの重要度が高い。
しかし弱い相手を蹂躙するだけでは命の価値が下がってしまうように最近感じていた。
だから俺より上の存在を求めていた。
相手が強ければ俺はもっと強く成長できる。そう感じていた。
しかし俺より強い相手なんてそうそう転がっていない。
そう困っていたある日にキキが俺に提案してきたのだ。
「自分達と訓練をすればいいのでは」、と。
そう言われて、そう言えばそうだな。と何故俺はその提案を思い付きしなかったのか不思議に思った。考えてもしかしてと思いたった。
たぶんだが無意識に俺の眷属であるこいつ等に危害を咥えたくない。と頭の片隅にあったのが原因ではないかと考えた。
とまあキキの提案を受け入れ早速と訓練した。
まあ結果は圧倒された。
キキだけでなくファンにも負けた。
自分の小ささを改めて感じ自分が強いと自惚れ勘違いしていた自分に情けなさを感じた。
それから訓練の日々に身を置いた。
朝に起きたらキキと軽く訓練を行い、訓練を終えたら朝食を摂る。
朝食を摂ったら昼までファンかキキのどちらかと訓練する。
主にキキと訓練を行うのが多い。『なんでマスターはキキとばっかり遊ぶの~』と拗ねられたが、残念ながらファンは訓練相手にあまり向いていない。最初に手合わせしたときは遠慮せず来いとは言ったが、マジで遠慮せず魔獣化した拳を受け数メートル吹き飛ばされた。
(あれは下手したら死んでたかも、な……)
昼は空腹感があれば摂るが無ければ拠点にしている洞窟周辺の地域の確認と、その際に【魔獣】がいれば、有能であれば眷属候補として確保。それ以外なら食用に狩る。魔物にとっての心臓である【魔心石】がある限り、それを奪わない限り魔物は完全に死に消える事はない。
他にも飲み水を取りに行ったり、訓練で汗を掻いた後でもあるので飲み水と違う水場で汗を流したりした。
やはり俺も日本人だからか一日に一回は身を清めたいと言う気持ちが高い。熱い湯に肩まで浸かると疲れが取れ精神的に癒される。ちなみに水場に温める鉱石を落とし温めて湯にしている。便利な鉱石の類は街では売っているらしいのだが、街に入れない今では商人から得るしかない。
主に得ている商人だが最初に盗賊を始末した際に襲われていた親子の二人からだ。
ちゃんと俺達のことは口外しないでいるので約束事に関しては信頼している。
あと―――湯に浸かるのは俺だけではなくファンとキキもだ。無論小さい蝙蝠形態のキキなら湯に浸かれるけど、大柄の魔獣形態のファンでは水が溢れ減ってしまうので人間モードで入る。
水浴びをさせる為にファンを”人化”させると、必ず俺も一緒とおねだりされた。一人もしくはキキと入れと言うが、不満爆発させたファンに強引に伴にさせられた。
……当然の流れで、いくら心が壊れた俺であっても、やはり裸の美少女を前にして抑えられず、と言うかファンに押し切られる様に抱き合い行為に発展するのは仕方ないことだ。
クールな騎士の様で真面目なキキだが、こと性に関しては恥ずかしがり屋な面が強い。だから最初は一人、もしくはファンと水浴びをしていた……のだが。
俺とファンの情事に当てられたのか羞恥よりも好奇心が強く積もって行ったようだった。
ある日に、キキが魔力を多く使った時があった。キキは対象の血液を吸う事で魔力を回復させることが出来る。それは”人化”した状態でも適応される。
なのでその場でキキの好物となっている俺の血を与えたところ、キキが普段よりも多く血を吸った影響もあったのか、どこかキキの目が据わり始め、顔が赤くなっていた。そしてなんだかふらふらと身体を揺れる様になった。
その時のキキを例えるなら酒に酔った状態が近いだろうか。
普段では見れないほどしな垂れかかってくるキキ。
酔った勢いで好意を示すキキに、俺は負けた。
洞窟に急ぎ戻るとキキを抱いた。
ファンとはまた違う快感があった。
特に普段キキが俺の首筋から血を吸うので、俺もキキの首筋を舐めたり噛んだりすると凄く興奮したようだ。
そのまま後ろから抱きしめる様に最後までいった。
行為後はもちろん酔いが醒めたキキが羞恥に当てられ真っ赤に身悶えていた。
しばらくは目を合わせてくれず顔が沸騰しているかのように真っ赤に染まり隠れたりしたな。面白かった。
そんなこんなで水浴びでも一緒に浴び、ファン程ではないが、抱き合ったりしたな。行為無しの方が多いけど。
そして日が落ちる前に拠点の洞窟に戻り、食事を摂った後は、ファンを背に預けながら眠りにつく。
そんな日々の生活を送ってきた。
始めは現代っ子であった自分では慣れない生活に匙を投げるのではと思ったのだが、思ったよりもこの生活に順応した。楽しいとすら感じている。
少なからずこの環境に追いやってくれた王国の連中に感謝してもよいかなと思う事もあった。
「ふぅ。ここまでにしておくか」
「はい。しかしながら主殿も強くなられましたね。先程なんかは気を一瞬でも抜くと武器を持っていかれる勢いがありましたから」
「そうか。まあ主である俺がお前達より弱いのはどうかと思うからな。それにまだまだだ。特にキキは本来の魔法を組み合わせた場合、更に手強くなるからな。だから今後も精進あるのみだな」
そうしてキキとの訓練を終えた。訓練後は俺、ファン、キキと朝食を摂った。
俺、ファンは普通?の食事。肉は【魔獣多め】。キキは通常モードの蝙蝠形態で俺の首筋から血を飲む。
食後はキキと二戦目。あとはファンとも手合わせを行った。
今日は中々接戦までいった。
ファンとキキとの訓練の成果が実を結んでいる実感を得られている。
食用に喰っている【魔獣】の肉の影響もあるだろう。
俺の能力は魔獣の肉を食らう事でStatusが上がるのと負傷の治癒効果を得ることが出来る。
食らう魔獣の種類や能力、実力の差でStatus上昇効果は変化する。
これは俺だけに許された能力と言えるだろう。
他の人間が【魔獣】を食えば状態が悪化するはずだ。
人間にとっては魔物の体は毒にしかならないからだ。
試しに【魔獣】以外の魔物を狩り口にしたら身体が危険信号を上げた。
すぐさま口にしたモノを吐き出し、念の為に用意していた魔獣の肉を食った。
飲み込む前でも危険と感じたので、やはり俺の能力は【魔獣】対象だと理解した。
訓練後は夕方の得物の確保。
水浴びを3人でし、”待っている奴”がいるので早めに洞窟に戻った。
そして洞窟の奥の間に戻ると”待っている奴”に声を掛けた。
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