22話:あれ、なんで?!
最後に始末した盗賊リーダーの男が俺に向かって前のめりに倒れてくる。
「おっと…」
男の正面にいるのでこのままでは抱き留めてしまうと言う気持ち悪い行為となるので、男の心臓を貫いている手を急ぎ抜き体を横にずらし躱す。
ドサッと倒れる男。
地面に男の血が水溜りのように広がる。
「……」
辺りに転がる盗賊の死体が転がっている。
それに目を向けるも特に感傷を抱くことはなかった。
(本当に何も感じないな…。昔の『僕』が今の『俺』を見たらどう思うのだろうな……ハハっ、阿保らしいな。俺…)
己の価値観が変わった事実。昔の違いに現在の自分を当て嵌める馬鹿さ加減に馬鹿だと苦笑する。
受け入れた事実を胸にして進む。
過去は過去。
過去に戻れない。
いや戻るつもりなんて今の俺にはない。
今の俺が『俺』なのだから。なら突き進むだけだ。それに俺は一人じゃない。だから大丈夫だ。
「マスター♪」
「主殿」
意味無き感傷を終えると同時にファンとキキが俺の元にやってくる。
満面の笑みを浮かべながらファンが俺に向かって飛び抱き着いてくる。
身長差がありファンは小柄であるので俺の胸位にファンの頭が当たる。
ファンのサラサラの長い金髪が俺の胸をくすぐる。ギュッと抱き着き腕を俺の背に回してくる。すると当然密着するから。うん。ファンの大きな柔らかい感触が…。
「主殿……」
冷たい目をキキから向けられる。
ゾクッと背筋が走った気がした。
アハハ…と苦笑した後、何とか柔らかーじゃなく、ファンに離れてもらう。
ムウぅとファンは若干不満そうだったが抱き着いて甘えられたので良しとしたようだ。
未だに冷たい目をしているキキに俺は自分の人差し指を噛み血を滴らせる。
すると冷たかった目と顔が歓喜の表情に変わり頬を染めていた。
キキは元は吸血蝙蝠の魔物だ。人間化していてもその特性である吸血衝動はあるようだ。
期待の籠ったと言うか待ち切れない表情と目を向けてくるキキに、「いいぞ」と許可を出すと俺の手を取るとキキは膝を立てる様に腰を落とすと口を開け俺の血が出ている指を含む。
そして舐める様に血を飲んでいく。
クールな美人であるキキの様な女性に己の指を咥え舐められている姿がエロイなと思っていた。あと何だか騎士に忠誠を捧げている様だなと思った。
まあ何にしろキキの機嫌も戻って良しにしよう。
どこかファンが羨ましそうでウズウズと体を震わせていたのは気付かなかったことにしよう。
うん目を合わせない。合わせた瞬間、最初の日のようにやられそう……。
+
キキへのご機嫌取りの後。
俺達は始末した盗賊連中が身に着けていた所持品を回収していく。
正直あまり期待はしていなかったんだが、下っ端に関しては期待外れだった。
とりあえず金品系の回収。
この世界での金銭の回収をしていく。
この先必要になるか分からないが有るか無いかで言えば有るに越したことはないと判断した。
あとはリーダーの男と、その側近であろう堅の良かった男の所持していた武器をそれぞれ回収する。
刀剣と槍と斧の複合武器であるハルバートを回収。
回収後は一先ず刀剣をファンに、ハルバートをキキに持たせた。
あとはまだ使えそうなナイフの回収をしようと思った、その時だった。
急にファンとキキの身体が光り輝き始めた。
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