17話:Fan視点…マスターに褒めてもらうために!

「よぉーし、マスターに褒めてもらうためにも、頑張ってやるぞー!」


敵を前にやる気満々で「むっ」と拳を握り気合を入れる。

今まではマスターが、ファンをマスターと同じ”人間”にしてくれないから、戦闘は”魔獣”としての姿で戦っていた。

ファンが始めてマスターと出逢ったあの日からどうしてかよく分かんないけど、今の人間の女の子の姿にしてくれなかったんだよね。


(むふぅ、そこはちょっと不満だけど、今回頑張ってマスターの役に立てたら、このまま人としていさせてくれるかもしれないもんね)


体の具合は好調!

【魔獣】の時は四足歩行でいたけど今は足2本で立っていることや、見えていた高さとかが変わったりはしたけど、万全に相手を倒せるよ。

マスターの方に視線を向ける。


「ムフフ…」


マスターを見ているとなんだか疼いてくる。

はぅ…疼いてくるよ!主にファンの雌の部分が♪

だってマスターは凄くカッコイイから!

はあ♪…頑張った先のご褒美に思わず疼いちゃうよ!


「なんでぇ、アイツラ、こんな年端も行かねえガキンチョ共にやられたってのかよ」

「まったくで。情けねぇぞ、まったく」

「まあ、俺らの相手にするガキの女は、女として育ってるようだしィ、目が眩んで油断したんじゃねえ?」

「ありえそうだ…ククッ」


ファンを囲う様に陣取る下劣で気持ち悪い表情を浮かべる雄共が何か言ってる。

たしか盗賊って言う野蛮で弱い集まりだったかな。

うん。さっき殺った盗賊達は正直弱すぎた。


(クンクン……)


鼻をクンクンと鳴らすように嗅ぐ。

ファンは相手の匂いで少し相手の力量が分かるのだ。

そして嗅いでみて分かった。


『大した事ない相手だよ』、と。


キキの方の連中も似たような匂いなので問題ないなと思った。マスターが相手にするみたいの、リーダー?らしい雄は少し歯応えがありそうな感じの匂いがした。


「キキ、そいつらも大した事ないよ!」

「分かっています。ですが油断大敵と言う事もあります。ファン殿も気を付けて」

「分かったよ!あと、マスター!そいつ、他の人間より少し歯応えあるよ!」

「ああ、分かっている。それよりも俺達の事よりファンは自分の獲物を逃さず始末することを優先しろ」


キキとマスターに教えたけど、問題ないみたいだった。ファンがそう告げた際に周りの雑魚から殺気立ったものを感じたけど特に気にしない。

ムフ、しかし、2人共、特にマスターはやっぱりカッコイイ!

盗賊の雄共なんて目じゃないくらいだよ!


おっと!カッコイイマスターに思わず見惚れそうになる。

マスターに自分の獲物を優先しろって言われたんだから、ちゃんとしないと。

じゃないと褒めてもらえないから!

あと、キキからも油断しない様にって言われたし、気を付けよう。


さあ、それじゃ、ちゃちゃっと片付けちゃおう!


この人間の体では初めて戦う。

身に着ているこの服はちょっと窮屈感があるけど、マスターが選んでくれた大切な服だから贅沢は言わないようにしないと。あとせっかくだから汚さないようにしないとね。

ただ身体機能と戦闘技術は今までの”魔獣”の時とそれほど変わらない気がしている。


「よし……いくよっ!まずは気持ち悪い視線のアンタッ!」


姿勢を低めにしつつ爪の構えを取りながら両足に力を籠める。

そしてさっきからなんだか気持ちが悪い目を、特にファンの大きな胸に向けている奴をまず標的にし、ざっと地面を蹴る様に一気に距離を詰める。


「えっ…いつのま―」


相手はまるでファンの動きが見えなかったみたい。

何が起きたのかも理解できなかったようで、正直そこに棒のように突っ立ってるだけのように見えた。


「やぁ!“ワイルドぉファーングぅ”!!」


そして隙だらけの無防備な相手を、自分の右手を魔獣の時の手に変化させ、その獣爪で相手の頭を吹き飛ばした。


「わわっ!」


慌てて一度距離を取る。

折角の服が相手の首から噴き出す気持ち悪い血が付くとこだったのと、思っていた以上の獣爪の威力に驚いたから。

正直今のは驚いた。

相手の首を切り裂いて飛ばすつもりだったのだけど、どうやら加減が上手く行かず、思った以上の力が入っていたみたい。


「な!?なんだよあれ!?」

「ま、魔獣の腕か、アレッ!?」

「にん、人間じゃ、ない、のか!?あの女!?」


何だかファンに顔を青ざめながら見てくる残りもの。その目には恐れがこびりついているように感じた。

フォンの”部分獣化”を見て、ファンがただの人間じゃないと分かったみたい。

けど、


「失礼だよっ!今のファンは、マスターと同じ、人なんだからっ!」


ファンも自分が普通でないのは分かっているけど、今のファンはマスター大好きな一人の人間の女の子。

それを何だか否定されたように感じちょっとムカッと来た。


だからその気持ちのまま、一気に始末する。

今度は威力を調整しながら、敵の悲鳴と共に”獣爪”で切り裂き倒した。

長い金の髪とスカート?がふわりと風に靡かせながら。勿論スカートの中身は見せないよ。

見せるのは大好きなマスターだけなんだから♪


そして僅か数分の間にファンの相手にした連中は息絶えた。



===============

~ファン~

【人間形態時、会得している能力】

○部分獣化…体の部分を魔獣形態の時の状態にする事が出来る。魔獣形態化には魔力維持が掛かる。

♦腕…鋭い爪を生やした黄色い表皮の腕。爪による攻撃、”獣爪”は殺傷能力が高い。一撃で弱い相手なら部位を切り裂くよりも吹き飛ばせる威力がある。また”風”を纏わせると更に殺傷能力が上がる。

○俊脚…足に魔力を籠め踏み込み相手に接近する技能。

○嗅覚確認…相手の匂いを嗅ぎ分け力量を図る事が出来る。

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