10話:Leaf視点…『大樹の聖女』と『無能者』と
【
私のスマホに増えていたアプリ。
国王に促され皆そのアプリを起動した。
私もとりあえず促された通りにそのアプリに触れ起動した。
すると画面に私のステータスが表示されていた。
==============
Name:
Class:呪療士
Atk:50
Dfs:60
Spd:40
Mp:300
【Ability】
♢大樹の聖女・Level:Ⅲ
【Skill】
♢聖樹の波動・Level:Ⅰ(癒しの力を広範囲で拡散して発動できる。樹の近くだと効能が上がる。)
♢大樹の癒し・Level:Ⅰ(癒しの力で対象の負傷を癒す。樹の近くだと効能が上がる。)
♢障害不変・Level:Ⅰ(自身に対する状態異常を防げる。)
♢固有属性【光】
===============
「……聖女って何?私が?…」
自分のステータスを確認して私は、「ないわぁ~」と思った。
確かに王様は”聖なる”と言っていたけど”聖女”はなんだか私に合っていないと思った。
ただ、【大樹】と言う部分には、自分の名前と似通っていたのでアレだなぁと思った。
Skillと言うのも3つ明記されていた。
全て初めだからかLevelはⅠだった。
3つの内2つのSkillは癒し、つまり治療系の能力みたい。そしてこのSkillは【大樹】に影響しているのか、樹のある場所で使うと効能が上がるみたいだった。
残り1つは状態異常、つまり毒とか麻痺などに対して耐性が付くみたい。
どのくらいの耐性が付くのか分からない。どの程度まで防いでくれるのか分からないのがちょっと曖昧だなと思った。
そんな風に自分のSkillの確認をし終えた時だった。
「おぉ!俺はやっぱり勇者だ!しかも”聖なる勇者”だ!」
神藤君が嬉しそうに叫ぶ様に声にした。私には周囲に聞こえるようにわざとらしく聞こえた。
「ほう……うむ、確かにその様であるな。ステータスも中々。サトシよ。これからは勇者として汝に期待させてもらうぞ」
「はっははっ♪、えぇ、任せて下さい!」
王様にはどうやら召喚者の開いているステータスを見る事が出来るらしい。
アレも能力…Skillなのかなと思った。それとあの王様にはステータスに関して隠し事が安易に出来ないと知る事になった。
そのあと王様は「ふむ、ふむ」と頷きの声を上げていた。一人一人のステータスを確認している様だった。頷く表情は笑みでどうやら今のところ満足のいく結果のようだった。
「うむ、汝は【聖槍使い】か。【勇者】の他に聖なる者だ。…ほう、そちらの女子は精霊使いの上位である【聖霊使い】の様だな。うむ、なかなか思っていた以上の掘り出し物の様だ。うむうむ、さて次は其方か」
王様が私の方に視線を向けて来た。どうやら私の番が来たらしい。
「ほう、汝は聖女なのだな。うむ、汝の力で皆の癒しとなるがいいぞ。汝で4人目の光の聖なる者だな」
なんか気持ち悪い事を言ってきた。
うん、そう言われて鳥肌が立った。勿論表情には出さないようにした。
あと、どうやら王様によれば固有属性は【光】であり、それでいて【聖】の名の付くAbilityを有しているのは私の他に3名いるみたい。
1人は神藤君。…彼と一緒って嫌だなと思った。
なんだか王様が告げた事で皆から注目の視線を受けるし凄く居心地が悪くなった。
(うぅ、注目されるのはやっぱり苦手なのよね。そうだ、ケモノ君はどうだったんだろ?)
ケモノ君の事が気になり私は彼の方に意識を向ける。
目を向けて私は驚いた。
何だか慌てているのか酷く怯えの様なものが彼にはあったのだ。
何かあったのかなと思うと同時に王様が怒鳴り声を上げた。
「なんだぁ、この無能を体現したふざけたStatusはぁ!!」
王様が怒り心頭の表情のままその座より立ちあがると彼に、ケモノ君に怒りの目を向けた。
その怒りの目にケモノ君はビクッと怯えていた。何か声にしたいのだろうけどカチカチと震え旨く声に出せない様だった。
「貴様かぁ!この我の生涯一度の奇跡に泥を塗った忌まわしいき凡夫はぁ!!」
「い、いあ…いや…」
怒りで顔を赤くする王様はその指に付けている指輪を向ける。
「汝等にも見せてやろうではないか!我を怒らせるこの無能者の無様さをな!」
そう叫んだ王様の指輪の宝石部分に光が灯り宙に四方形の映像が浮かび上がった。
それにケモノ君は更に青ざめていた。
私もそれに目を向けた。
そこには彼のステータスが映し出されていた。
―――――――
Name:
Class:?
Atk:10
Dfs:10
Spd:10
Mp:10
【Ability】-
【Skill】-
―――――――
私とは違う異質なステータスがそこにはあった。
私にはAbilityが一つとSkillがいくつかあった。
でも彼には何も記載されていなかった。
青ざめた表情を浮かべている彼を見ている限りどうやら彼が何か隠したりしているわけではないのが分かった。
「なにあれ、何もないとかどんだけ?」
「おいおい、これは王様を怒らせても仕方ないだろ」
「無能と罵られても仕方にわねアレは」
ケモノ君のステータスを見てクラスメイトは侮蔑を浮かべケモノ君を笑ったり苦笑したりしていた。どうしてそんなことを言うのだろうか。同じクラスの仲間なのに。
「本当、君ってばどこにいても不愉快な存在じゃないか。ケモノ臭いだけでなく疫病神の様じゃないか無能なんてさ」
その言葉を吐いたのは”勇者”らしい神藤サトシだった。
私はこの時にあの誓いを果たそうと思った。
彼が本当に困ったり、助けを求める場面が着たら彼を守ると。
私は彼の傍に寄り庇う為に足を動かそうとした。しかしそれより早く王様が宣告を告げた。
それは彼を今すぐこの場で処刑せよ!と言うものだった。
そう宣告されケモノ君は青ざめた表情が血が抜けたように真っ白になっていた。
震えてガクガクと震えていた。
クラスメイト達もさすがにそれは度が過ぎてないかと囁きあっていた。
その宣告を意外にも神藤サトシが制止させた。
「王よ。流石に処刑は遣り過ぎでしょう。俺も正直まだ人が死ぬ所なんて見たくもないし、この場は追放と言う形でこいつに恩赦してやってくれませんか?」
「ぬぅ………むっ、汝がそう言うのなら仕方ない。衛兵共、今すぐこの無能者を此処から、いや、我の視界の届かぬ、そうだなこの王国から今直ぐ追放せよ!本当に不愉快なものだ!」
その王様のは告げに呼応して王の間に待機していた鎧を待った男の人が何人も出てきてケモノ君を包囲した。そしてその手に持つ槍を彼に向け連行しようとする。
色を無くしたような表情で絶望の色が強いケモノ君。
私は一歩足を動かそうとした。
(なんで!?なんで動かないの!?私はケモノ君を助けたいのにっ)
そう思っているのに。彼が連れて行かれるのに!
なのに…なのに、私は動けなかった。
彼を取り押さえる騎士の持つ武器を、槍を目にして動けなかった。
私は怖くて動けなかった。
私が助けに入っても彼を守れない。それどころか騎士の槍でその場で彼が殺される。
そう頭に浮かんだ瞬間私の身体はただ制止の状態だった。
叫びつつ抗おうとしているケモノ君。
しかしどうすることも出来ず絶望をはらんだ叫びと共に追い遣られていく。
ふとケモノ君と私の視線が重なった。
何処か、微かでも良いと希望のある瞳を向けていた様に思う。
私は居た堪れなく視線を彼から逸らした。
(ごめんなさい、ごめんなさい…こんな弱い私で。誓っていた気持ちも守れない弱い私で、ごめんなさいっ)
私はただ心の中で『ごめんなさい』と謝り悔し涙の粒が溢れていた。
こうして彼はこの国から追放された。
このあと、私が彼に――ケモノ君と再会する事が出来たのは、この世界に来て数か月後のとある山脈地帯の洞窟内だった。
再会した時、私はケモノ君にこの時のことをすぐに謝り謝罪したかった。
王国で訓練を受けて成長し力を得た今なら、あの時は伸ばせなかった誓いの手を彼に捧げられる。そう思っていた。
だけど、再会した彼は、私の知っていた彼ではなかった。
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