4話:眷属の力
地面から現れたのは蟻を巨大にした正直嫌悪感のある様相の魔物だった。
大きさは2メートルは超えている。俺達よりでかい。
鋭そうな牙をガチガチと鳴らしている。
見た目の気持ち悪さ、(あまり俺は虫が好きでない)もあり鳥肌を立てつつ身体を起そうとするも、今までの疲労と先程の戦闘時に血を失い過ぎたこともあり動ける気がしなかった。
(くっ…ダメ、だな。身体が思う通りに動かせねぇなッ……仕方ない、な。ここはSkillを試しつつファングに任せる事にしよう)
この場は俺の初めての眷属となったサーベルタイガーに似た黄色い表皮をした虎の魔物、いや魔獣ファングに任せることにした。
ファングも戦闘態勢の状態で『グルルぅ…』と相手を威嚇していた。
さてっと、俺は自分の得たSkillを試して見ることにした。
まず試すのは”魔獣契約”によって眷属化した『魔獣』のステータスの確認だ。
このSkillによって契約した魔獣のステータスを自由に確認する事が出来るのだ。
俺はファングを見詰め頭に思い浮かべる。
するとこんな感じに浮かんできた。
=================
『眷属情報』
契約している魔獣…1体
『ファング』
種別:『魔獣』
生体情報…『性別:♀』『生誕:15年程』『眷属化:主(超陀こえたケモノ)』
…ステータス…
Atk:120
Dfs:70
Spd:120
Mp:90
…Skill…
♢風牙・Level:Ⅰ(己の爪や牙に”風”の属性を加えて強化できる。Levelが上がる程鋭さが上がる。)
♢主への忠誠愛・Level:EX(契約した主に対する忠誠と言う名の愛を現したもの。契約主を守る時には通常の数倍のステータスアップができる。)
=================
とまあ、こんな感じだった。
とりあえず俺は一つ気になったこともありファングに声を掛ける。
「お~い!お前メスだったのか!」
『ぐるるるぅ』
目線だけ俺の方に向けつつ声にするファング。
その声にはどこか『当たり前でしょ?』とでも言われている様な気がした。
なんだか俺に向けられた目線にそんな感じの非難が籠っている気がした。
いや、魔物に性別があるかなんて知らないんだからしょうがないだろ普通。
「…悪い、悪い、お前がメスならファングってのは何だかイマイチな気がするから、これからはファンって呼ぶからなぁ!」
『ぐるぅ♪』
どうやら嬉しいと思ってくれたようだ。
ステータスの方の名前の欄も『ファン』に変わった。
と言うか、敵の前で何をしてんだろうな、俺ってば。
あと、ステータスだな。ファンのステータスは今の俺より強かった。しかもファンの所持しているSkillなんだが、この”主への愛”ってSkill、物凄く便利なものだった。
まあ”愛”って部分がアレな気がするけども。
さて俺のSkillと併用すると物凄くステータスアップが望める。
とりあえずと、
「ファン!俺を守ってくれぇ!」
『ぐるるうう!!』
叫ぶように声を掛けるとファンの全身から溢れんばかりの気の高まりが上がった。
ファンも『任せてぇ、マスターは私が守るわぁ!』と雄叫びをあげる。
「おお、凄いもんだなぁ…恥ずかし気に叫んだかいはあったなぁ。…おお、ステータスも倍化してるな、んぅん、俺より強い眷属とは…まあこれからってことで納得するか。ん?なんか相手のアリモドキ、怯えてるのか徐々に後退してる、のか?」
ファンから発せられる溢れんばかりの気力に圧倒されたのかアリモドキは明らかに委縮している。怯えているとすら感じる。なんだか、ここに来たのは失敗だったとでもいうかのように別の意味で牙をガチガチと震わせていた。
まあ気にせずファンに告げる。
「ファン!たぶんそいつは眷属にも食用にもできないから、さっさと殺やってしまえ!遠慮せずになぁ!」
『グルルゥ♪』
おまかせ~とファンはアリモドキに飛び掛かっていった。
それからは戦いにすらならない、ただの蹂躙劇となった。
硬そうなアリモドキの身体も”風”の力を纏いSkillで倍化しているファンの爪の前では紙屑も同然だった。
聴こえてくるアリモドキの悲鳴がなんだか哀れに思えて来る俺だった。
そして楽々とアリモドキを駆逐したファンは俺の傍に戻ってくると頭を俺の体に擦り合わせてくる。
笑みを浮かべ甘えてくるその姿に『ほめて~』と告げているようだった。
俺はよく頑張ったとファンの頭を撫でてやる。
物凄く嬉しそうに喉を鳴らすファンだった。
そんなファンに内心苦笑している俺だった。
(……俺、とんでもないものを得たのかも……まあ、俺の力なんだしと割り切ろう…無論俺自身も強くならないといけないからな……頼り過ぎないように気を付けよう…うん…)
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